研究課題/領域番号 |
26420635
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研究機関 | 岐阜市立女子短期大学 |
研究代表者 |
柳田 良造 岐阜市立女子短期大学, その他部局等, 教授 (70510460)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 開拓 / 農村空間構造 / アメリカ中西部 / タウンシップ / 農村景観 / 市街地空間構造 / 北海道 / 近代 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、主にアメリカ中西部の19世紀の開拓と農村空間の現地調査を中心とする研究を進めた。平成26年8月に中西部のミネソタ州、カンザス州において農村地域を訪れ、19世紀のタウンシップによる開拓農村の土地区画とその後の展開による農村地域の空間構造と小市街地の計画原理ならびに景観を調査した。合わせて、19世紀のタウンシップに関する文献調査としてミネソタ州セントポール市にあるミネソタ歴史協会の付属図書館にて、ミネソタ州のタウンシップによる開拓入植の地域史ならびに当時の開拓の詳細な地図のコピーを多数入手し、ローカルレベルでの開拓入植の展開を解き明かすことのできる1次資料を収集した。またミズール州セントルイス市の博物館にて、アメリカの中西部開拓の起点となった19世紀の初頭のミシシッピ川から太平洋までの未開地探検の状況を描いた資料を入手し、タウンシップが実施された地域が実は19世紀の初頭の未開地探検と強い関連性を示すことを知見を得た。 この調査において、従来ほとんど明らかになっていなかったタウンシップ制度でのアメリカ中西部の19世紀の開拓事業の展開を解明する基礎資料を多く入手するとともに、我が国の明治期の北海道開拓での殖民区画制度や市街地形成の計画原理との共通性を現地で従来以上に強く感じた。また、相違点についてもそれを分析する資料を入手することができた。言い換えると、地球上でアメリカ中西部と北海道の農村部の2箇所にのみ整然とした格子状の農村土地区画が見られる理由について、それを解明する基礎資料を多数得ることができた調査成果であったと言える。現地調査後、収集した資料の整理と分析の作業に着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アメリカ中西部の19世紀の開拓と農村空間の現地調査を中心とする研究を進めたが、調査地点としてどの地域を選ぶか、なかなか難しかった。現在の農村地域の空間については、事前に情報も得られ、候補地はしぼられたが、その候補地についての歴史文献や19世紀のローカルレベルでの詳細な地図が入手できるかについては、ほとんど日本では事前に下調べができなかった。 事前の調べは難しかったが、結果からいうと、調査で訪れた場所は、研究目的にとってベストチョイスであったといえる。まず、文献や詳細な地図の入手について大学、公共図書館、歴史博物館等を候補に考えていたが、そのなかで最初に訪れたミネソタ州セントポール市のミネソタ歴史協会の付属図書館は、調査のねらいに答える十分な資料を収集しており、またその複写についても十分に便宜を図ってもらえるものであり、この一箇所のみで基礎資料については十分な成果を得ることができた。その基礎資料の収集をもとに次に訪れた農村空間の現地調査地は、予定通りの調査を進めることができた。 またミズール州セントルイス市の博物館にて、アメリカの中西部開拓の起点となった19世紀の初頭のミシシッピ川から太平洋までの未開地探検の状況(ルイス&クラークの探検として有名)を描いた資料を入手したが、これによってタウンシップが実施された地域がアメリカの中西部の範囲に限られる理由を解き明かすことの知見を得た。この調査も大きな成果であった。 このように、幸運も重なり、目標とした調査は成果を上げ、研究か順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査による収集した資料の整理と分析の作業をもとに、アメリカ中西部の19世紀の開拓と農村空間の形成の計画原理を地域レベルから、詳細にその展開過程を解明したいと考えている。合わせて我が国の明治期の北海道での開拓の計画手法との共通点と相違点を明らかにしたい。これらの分析を総合して明治期の北我が国の開拓の計画手法を国際比較分析をなかで位置付けしたいと考えている。研究については、日本建築学会論文集委員会投稿論文としてまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
アメリカでの調査旅費は調査が想定以上に順調に進み、115,448円未使用額が出た。また人件費謝金、その他もアメリカでの調査の分析のメイン作業は次年度になったため、合わせて未使用額105,366円の未使用額が出た。物品費はほぼ想定通りであったが、20,551円のオーバーになった。
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次年度使用額の使用計画 |
合計で200,263円の次年度使用額はアメリカ調査との比較での北海道の開拓地域調査、アメリカ調査のデータ分析作業で使用する計画である。
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