研究課題/領域番号 |
26420635
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研究機関 | 岐阜市立女子短期大学 |
研究代表者 |
柳田 良造 岐阜市立女子短期大学, その他部局等, 教授 (70510460)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 開拓 / 区画 / タウンシップ / 殖民区画 / アメリカ / 北海道 / 市街地 / 農村 |
研究実績の概要 |
我が国の近代期の開拓事業(現在日本の農地面積の1/4に近い100万haを超える農耕地の増加と農村形成があった)にはアメリカ合衆国の中西部開拓でのタウンシップ等、西洋近代の農村計画制度と市街地形成から、北海道開拓での殖民区画制度などは大きな影響を受けたと言われるが、その実態はほとんど明らかになっていない。本研究はタウンシップ制度等によるアメリカ合衆国の中西部開拓の計画論や開拓事業の展開過程をさぐり、どのような空間計画や制度が我が国の開拓事業に受容されたかを明らかにするものである。 アメリカ中西部での開拓事業としてミネソタ州、ミズーリ州、カンサス州でのタウンシップ制度によって開拓が行われた地域の現地調査(平成26年度)の比較研究として平成27年度は北海道の明治開拓期の開拓の空間計画を分析するための現地調査を7月に行った。殖民区画制度が実施された地域では十勝、根釧原野、富良野市、屯田兵村の入植地では北見市の調査を行い、殖民区画では開拓の区画の軸線決定に影響のあった国見の丘の調査と地形の関連性、屯田兵村での開拓の区画と現在の土地利用の状況等をさぐることができた。十勝の足寄町、根釧原野の別海町では開拓地での酪農実践についての興味深い知見を得ることができた。また関連して12月に九州地域の農村地域の調査と平成28年2月、日韓建築交流会でアメリカ中西部での開拓と北海道開拓での空間計画についての講演を行った。 これらの調査研究等をもとに、北海道での明治期の開拓事業の中での市街地形成の側面を分析した論文「北海道開拓期における市街地形成の計画原理」をまとめ、平成27年9月に日本建築学会計画系論文集(査読付き)に投稿し、平成28年4月に採用が決定した。また、アメリカのタウンシップ制度や北海道開拓に関連する文献資料収集の作業を行い、多くの貴重な資料を収集することができている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況はほぼ計画どおりで、順調に来ている。 現地調査では、まずアメリカ中西部での19世紀の開拓事業としてタウンシップの現地調査を26年8月に行い、その比較として北海道での開拓期の空間計画を分析するための現地調査を平成27年7月に行った。それぞれの調査から仮説を検証できるような有益な調査データを得ることができている。 文献資料収集では、タウンシップ制度や殖民区画制度の関連文献についてアメリカでの現地調査時や27年度は大学図書館間の資料閲覧制度などを使い、資料収集の作業を行い、 20点以上の興味深い資料を収集することができている。 資料については整理、解読中であり、調査の分析作業を兼ねた論文作成では「タウンシップとメインストリート-アメリカ中西部開拓調査の旅から-」(平成27年3月、岐阜市立女子短期大学紀要第64輯)「北海道開拓期における市街地形成の計画原理」(日本建築学会計画系論文集、平成28年4月採用決定)等の成果をあげている。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査データや文献資料の整理、分析作業を行い、アメリカの中西部開拓での計画手法としてのタウンシップについて、その誕生の経緯、計画の内容と変遷、実際のモデルとしての開拓地での計画の施行と開拓の進展過程をさぐり、アメリカでの19世紀の開拓事業の空間計画の計画原理を明らかにする論文をまとめ、日本建築学会計画系論文集に投稿する予定である。論文の具体的内容はアメリカ中西部での開拓の空間計画として環境モデル図として描き、農村と集落の計画がどういう特色もつのかを明らかにする。また開拓と道路、鉄道、用水等の社会インフラ整備との関連性もさぐるとともに、農村地域での生活拠点(市街地、公共施設、学校、教会等の施設)の立地の関係についても明らかにする。それらの分析を通して、北海道開拓での空間計画との比較から、計画の特質を解明するものである。
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