人口減少時代の都市計画を考える上で,自治体の都市計画実務における地理情報システム(以下,都市計画GIS)は重要なツールである.都市計画GISの導入・利活用状況を継続的に調べると,GISを導入はしてみたものの数年後には活用していないという自治体が散見 される.これには様々な理由・要因等が複雑に介在している可能性が高く,都市計画GISを活用しなくなった自治体の概況やそうなった理由・原因等は十分に把握されていない.本研究課題は,主にGISを使わなくなった自治体へのインタビュー等を通じて,都市計画GISの持続的な利活用のためのポイントの抽出を目的とする. 本年度は昨年度から引き続き、アンケート調査結果からの都市計画GISの導入状況の盛衰について分析を行い、特に導入はしてみたもののその後利活用がされていないといった回答の団体を中心にインタビュー調査候補を抽出した(40団体)。多くの自治体で担当者の異動等の理由により交渉が難航したが、結果4団体に対して調査(対面2団体、電話等2団体)ができた。このうち、2団体は導入を他部署が担っており、必ずしも導入主体と利活用の主体が一致しない場合で都市計画GISを導入している認識が低い場合があることが解った。一方で、実際に利活用が中止になった団体での主な理由は、人材・知識が実務的に追随し切れておらず、高度な利用に際してはコンサル等の外部の協力が必要なため、結果自前で都市計画GISを整備・維持するインセンティブ(特に費用面)が低下したという状況や、財政部局や議会からの指摘により整備が継続できなくなった事例等が聞かれた。全体的には、どの団体も都市計画GIS自体の有用性についての認識はあるものの、どこか「高度な知識や費用を要するもの」であるという認識や、その技術的な解決策の糸口(情報源)が輻輳しているといった認識を持っているというあたりが共通的に見られた。
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