今年度は、昨年度から引き続き日本・中国における折衷様建築および禅宗様建築、関連する歴史的建造物、関連画像史料などを対象に調査を行った。とくに、昨年度までの現地調査の結果のもと、新たに入手した新史料と付き合わせながら、平安後期から室町後期に創建された国指定文化財の方三間一重仏堂を中心に、該当建築の架構の変遷について検討し、日本建築学会大会にて学生とともに報告した。併せて、アジアの建築交流国際シンポジウム(ISAIA)において、空間史学研究会の後援のもと、歴史系オーガナイズドセッション「聖と俗の界面――東アジアにおける仏国土の技法と意匠/The Surfaces between pure and impure lands――On the technique and design representing the Buddha Land in East Asia」を企画・運営した。中世の仏堂では、人々の身分や儀礼によってさまざまに空間が区別され、他方で仏は空間のカテゴリーを超越することで人々に応じていた。また古代では、仏堂の外にまで儀礼の空間が求められることもあった。聖と俗の境界は、時と場合により柔軟に措定されてきたのである。この仏堂の空間にみる柔軟な措定をめぐって、日本建築史および日本美術史学の研究者をはじめ、中国・韓国の建築史研究者とともに、仏教建築にみる聖と俗の空間の有り様についての具体的な情報交換ができた。
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