研究課題/領域番号 |
26420641
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
野口 昌夫 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (90218305)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 都市史 / イタリア都市形成史 / 海洋都市 / リグーリア州 |
研究実績の概要 |
研究実施計画の中のリグーリア州西部、リグーリア海岸沿岸の歴史的小都市と後背地域を対象として、平成27年10月10日から22日まで実地調査を行った。調査地はジェノヴァの西側(西リグーリア海)のサヴォナ、アルベンガ、アラッシオ、ディアノ・マリーノ、インペリア(ポルト・マウリツィオ)、サンレモ、ヴェンティミリアなどの海洋小都市である。現地の各都市の市役所、文書館、にて史料・資料を渉猟するとともに、様々な地図資料(カルトグラフィア)を収集した。また写真撮影、部分的な実測も合わせて行い、一定の成果を得られた。一方でジェノヴァ大学建築学部図書館に通い、後背の丘陵地に点在する中世起源の丘上都市についての研究を進め、今後は特に北側内陸部の歴史的街道ネットワークの形成に着目してさらなる資料収集と現地調査が必要になることが判明した。 全体として、今回対象とした都市は、前年度に対象としたジェノヴァの東側の海洋都市と比べ、西側のフランス国境に接する地域であるため、フランス系のサヴォイア家(ピエモンテ州、トリノを中心とした王家)の影響が色濃く、ジェノヴァ共和国の覇権が遅れて進行したとともに、特にサヴォナなどではトリノの都市計画の影響がバロック時代以降色濃く残っていることが確認できた。また、アルベンガにみられる中世都市の構造が古代ローマ以降の川筋の変化と対応して形成されてきた事実、ヴェンティミリアのように年が丘上と平地に二極化して発展していった過程なども明らかになり、どの都市も類似した形成過程はみられず、それぞれに固有な発展形態をもっていることを再認識できた。さらにジェノヴァ大学建築学部の教授・研究者との交流ができたことも、今後の研究に向けた大きな成果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
10月の調査以来、持ち帰ったすべての資料を整理して分析を進めている。図像資料以外はすべてイタリア語、フランス語、ラテン語であるため、解読作業には時間がかかっているが、今年度の継続調査に出かける前に一通り完了する予定である。また各都市のカタスト(課税用不動産登記台帳とその付属地図、19世紀前半)は筆記体で書かれているため、文字の読み取り作業に手間取っているが、時間をかければ終了できる作業であるため、研究全体の進行はおおむね順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は10月に2週間ほどの現地調査を遂行する予定である。今回は海洋都市ではなく。その後背地における内陸都市が海洋都市との関係性の中でどのような発展過程を持つに至ったか、またリグーリア州からピエモンテ州へとつながる街道ネットワークと峠を境とするジェノヴァ共和国とトリノ公国との政治的関係が、内陸都市の形成に与えた影響などに重点を置いて調査する。対象都市はドルチェ・アックア、タッジア、チェリアーナ、アクイテルメなどである。研究・調査方法は前年度に準じたものとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費とその他が少なくなったのは、大学の研究費を使用したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はデジタルカメラの購入を予定しているため、その一部に次年度使用学を充てる予定である。
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