・最終年度の成果:最終年度はこれまでの研究をまとめた論文の作成及び追加調査を行った。その成果として、第一に、前年度調査を行った三丹地方における幕府や旗本の代官所(陣屋)の御蔵に関する研究論文と、豪雪地帯の諸大名などが大津に設けた蔵屋敷に関する研究論文が採用され、どちらも学会誌に掲載された。第二に、本研究課題のまとめの一つとして作成した加賀藩御蔵所の空間構成原理と地方性に関する研究論文が採用され、これも学会誌に掲載された。さらに、予算はないが、日本の豪雪地帯の御蔵所に関する研究を総括する研究論文を2編作成したので、学会へ投稿した(審査中)。 ・研究期間全体を通じた成果:これまでに査読付き論文5編が採用され、日本建築学会論文集に掲載された。加賀藩、鳥取藩、幕府領の御蔵所や前記の大津蔵屋敷に関する研究の成果である。また、本研究の主題である御蔵所に関する「全国藩倉シンポジウム」(鳥取県湯梨浜町)において全国の御蔵所について基調講演を行った。また、御蔵の保存や活用に関するパネルディスカッションにパネリストとして参加し、現存する橋津御蔵の建築的意義や活用について意見を述べた。さらに、日本民俗建築学会鳥取大会にて、鳥取藩の橋津御蔵や日本の豪雪地帯の御蔵に見られる庇の形式とその地域的分布について発表を行った。さらに御蔵の庇や検査所に注目し、御蔵所の空間構成原理と地方性に関するこれまでの研究を総括する論文を作成した。 また、日本の豪雪地帯において御蔵所に関する史料を比較的多く確認することができた。御蔵はかつて藩や地域を象徴する施設であった。これらの地域では、御蔵が地域のアイデンティティとなり今に受け継がれていると言えよう。その建築的意義を明らかにし、社会へ還元、情報発信することがきたと考えている。
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