研究課題
本研究はフランスにおけるアンリ・プロストの都市計画とミュゼ・ソシアルの役割を考察の対象にしたもので、主な研究の成果は次の5点である。第1にミュゼ・ソシアル会員名簿に基づいて、都市・農村衛生部門の主導者のひとりであるプロストが、1911年フランス都市計画家協会の設立や、設立メンバーを中心に検討した国内および植民地等の「都市の開発・美化・拡張」を目的とするコルニュデ法(1919年3月14日提出、1924年7月17日改正)の制定に尽力したことを明らかにした。第2にヴァール県古文書館所蔵「ヴァール県コート・ダジュールの保護と開発のための市町村自治体連絡協議会案」(1923年3月23日)に基づいて、約200kmに渡る海岸線のリゾート地開発の方針と具体案を明らかにした。第3にメス市古文書館所蔵「プラン・プロスト」と同市参事会審議録(1930年10月24日)に基づき、中心市街地の「美化」に注力した案の具体像を明らかにした。第4にパリ地域圏整備開発上級委員会に提出された「パリ地域圏全体開発」(1934年5月14日)に基づいて、城壁外の郊外地における保護と開発の具体的な内容を明らかにした。これらの3案はそれぞれ山海自然、歴史都市、郊外地というまったく異なる地域を対象にした「開発・美化・拡張」を目的とする都市計画であるが、プロストはいずれの案においても同法の目的にない、地形や遺産、景観を「保護」する独自の方針を貫いた。海外で実績のあるアルフレッド・アガシュ、レオン・ジョスリー、ジャック・グレベールら多数の建築家や造園家たちが同法案成立後、国内で都市計画を手がけるようになる。第5に、プロストは各都市の具体案ばかりでなく、20世紀前半のフランス都市計画に通底する方針の決定や制度の確立の面において多大な功績を残したことを明らかにした。
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