本研究では,戦前期すなわち日本統治期に,台湾で建設された44ヵ所全ての製糖工場と社宅街を対象として,製糖工場と社宅街の建設とその後が,周囲の街や集落に与えた影響を明らかにすることを目的に研究を進めた。研究期間3年間の最終年度である平成28年度は,具体的に以下のように研究を進めた。 平成28年9月に台湾を訪問した。国立台湾図書館,国立中興大学図書館,彰化県文化局県史館などを訪問して製糖業に関係する資料や郷土史や地域史に関係する文献などを収集した。また,橋頭糖廠を対象に現地調査を行った。さらに,中央研究院の研究者と研究打ち合わせを行った。平成29年3月にも台湾を訪問し,国立台湾図書館で各種資料や文献を収集した。 製糖工場と社宅街の復原配置図作製に必要な資料を収集する段階で見出すことができた火災保険特殊地図について検討を進め,査読付き論文を発表できた。また,台湾 中央研究院 地理資訊科学研究専題中心とデジタルデータの共有も行うことができた。さらに,平成29年2月には,この地図の原本の所蔵館である千代田区立日比谷図書文化館で講演会と展示を実施し,同3月には台湾 中央研究院 台湾史研究所で講演を行った。現在,平成30年中の復刻出版に向けて作業を進めている。 製糖工場や社宅街と周囲の街や集落との関係については,44ヵ所と数の多い台湾の事例を考察するための方針や視点の設定に苦慮した。しかし,まずは,数の少ない沖縄県の製糖工場と社宅街を対象に検討を行うことによって,台湾の事例に繋げることを考えた。その結果,沖縄の事例については方針や視点を設定することができ,日本建築学会九州支部研究報告で報告した。この作業によって,台湾の事例に適応する目処をつけることができたので,現在,検討作業を進めている。 これらの活動を中心に,引き続き,研究の具体的な様子をブログ「居住環境学科な日々」で紹介した。
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