研究課題/領域番号 |
26420649
|
研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
伊藤 洋子 (渡辺洋子) 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (40327755)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 片山東熊 / 神宮徴古館 / 神宮農業館 |
研究実績の概要 |
片山東熊(1854-1917)は工部大学校造家学科の第一期卒業生であり、明治を代表する建築家の一人である。申請者は前回、片山東熊の子孫宅に所蔵される史料研究により研究を実施したが、その過程で神宮徴古館・農業館所蔵の複数の建築図面を調査することができた。東熊印のある農業館青焼図面のほか、神宮神苑会が計画・建築した多くの建築図面がある。当研究は神宮徴古館・農業館所蔵の新出図面を調査し内容を整理する中で、神宮神苑会の業績と倉田山建築群の変遷を追うものである。また、徴古館・農業館の建築が東熊作品の中でいかなる位置づけとなり、後世の建築に影響を与えたかについても考察を行う。 1.史料収集について、神宮徴古館・農業館にて再度、追加調査をする予定であったが、平成26年度には徴古館が耐震補強工事に入って両館とも閉館したため、史料調査ではなく現地での聞取り調査に変更して実施した。新しく公開される徴古館の設計変更について主に話を聞いた。 2.史料に関してはすでに実施した第1回目調査(過年度)のデータを精査。各図面・史料の内容(what対象建築物・敷地who&whom作成者・確認者、when制作年代、whereどこの建築か、why何の目的で、howどのような形状か)の各項目をまとめた。平成27年度もこの方針に従って研究を進め、特に神宮徴古館の図画展示室に関し、史料をもとに3次元cadによる内装復原と考察を実施した。 3.東熊作品における両館の位置づけを明確化するため、片山の最初期の作品である在北京日本公使館(現存)の建築について研究した。平成26年度に発表済みである。 4.東京都立中央図書館木子文庫所蔵史料により、明治宮殿における東熊の業務分担と設計経緯を明らかにした。その際、片山家所蔵絵図を利用した。平成28年度に日本建築学会の査読付き論文に投稿する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一昨年度、神宮徴古館の耐震工事によって農業館とともに閉館になり、史料の再調査ができなかったことで予定変更をせざるを得なかったが、昨年もまた従前入手していた史料写真により予定通りデータ整理は進んだ。特に家具配置を描いた青焼き図面により、日光が問題となる徴古館の図画展示室の内装を再現することができた。 また外交資料館史料による東熊の在北京日本公使館の建築分析、木子文庫史料ほかによる明治宮殿の意匠変更や東熊の仕事などについて、東熊建築先晶分析は順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、下記の研究を実施する。 1.神宮徴古館・農業館所蔵の史料収集を正しくできたかについて再確認する。 2.神宮徴古館・農業館の設計における注力内容の分析。東熊作品、博物館建築史における両館の位置づけの明確化。 3.片山家史料の分析を含む、東熊が関わった建築設計の再評価。
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、東京都立中央図書館木子文庫所蔵史料を利用した東熊研究について日本建築学会の査読付き論文に投稿する予定であったが、分析にやや時間がかかった。掲載料に予定した分の予算が次年度送りとなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
上述の論文は平成28年度夏までに提出予定であり、掲載料として予定通り使用する。
|