片山東熊は工部大学校造家学科の第一期卒業生であり、明治を代表する建築家の一人である。申請者は前回、片山東熊の子孫宅に所蔵され、史料研究により研究を実施したが、その過程で神宮徴古館・農業館所蔵の複数の建築図面を調査することができた。東熊印のある農業館の青焼図面のほか、神宮神苑会が計画・建築した多くの建築図面がある。当研究は神宮徴古館・農業館所蔵の新出図面を調査し内容を整理する中で、徴古館・農業館の建築が東熊作品の中でいかなる位置づけとなり、後世の建築に影響を与えたかについても考察を行う。 1.史料収集について、神宮徴古館・農業館にて再度、追加調査をする予定であったが、平成26年度には徴古館が耐震補強工事に入って両館とも閉館したため、史料調査ではなく現地での聞取り調査に変更して実施した。新しく公開される徴古館の設計変更について主に話を聞いた。 2.史料に関してはすでに実施した第1回目調査(過年度)のデータを精査。各図面・史料の内容(対象建築物・敷地・作成者・確認者、制作年代、どこの建築か、目的と形状)の各項目をまとめた。平成27年度にはこの方針に従って研究を進め、特に神宮徴古館の図画展示室に関し、史料をもとに3次元cadによる内装復原と考察を実施した。 3.東熊作品における両館の位置づけを明確化するため、片山の最初期の作品である在北京日本公使館(現存)の建築について研究した。平成26年度末に日本建築学会関東支部にて発表済みである。 4.東京都立中央図書館木子文庫所蔵史料により、明治宮殿における東熊の業務分担と設計経緯を明らかにした。その際、片山家所蔵絵図を利用した。なお平成28年4月に片山家資料が芝浦工業大学の伊藤洋子研究室に寄託となり、詳細な調査が可能になった。 5.神宮徴古館・農業館関連資料について、7分冊の図面集を作成した。
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