今年度は最終成果発表のための期間延長年度であった。 学術論文として単著「「ヒコックス」型住宅の変容について F. L. ライトの住宅作品における多様性生成システムの研究」を6月に日本建築学会に投稿し,12月に採用決定し,2018年4月第83巻第746号に掲載された。プレイリー・ハウスの生成の鍵となる「ヒコックス」型平面を持つ21作品の差異と同一性が論じられ,その変容の意味が「居間・食堂・書斎の一体化と自律」として明らかにされた。 これまでの研究成果の総括として『花美術館vol.59特集フランク・ロイド・ライト』(蒼海出版)において特集(全43頁)を単独で監修し,8本の論文を発表した。「プレイリー・ハウスの生成」と「ユーソニアン・ハウスの生成」において,「型」の変容の事態の分析からその生成のカギを握る作品が明らかにされた。すなわちプレイリー・ハウスにおけるヒコックス邸とブラッドリー邸,及びその先駆けとなる「レディス・ホーム・ジャーナル」誌の2住宅計画案,及びユーソニアン・ハウスにおけるウィリー邸である。各論として「帝国ホテル 日本への贈り物」,「滝の音を聞く住宅 落水荘」では単一作品を論じ,「ライトの窓」ではインテリアエレメントを論じた。「フランク・ロイド・ライトの生涯」においてライトの生涯を,「ライトの建築思想」において彼の制作の背後にある思索を,「ライト建築の継承と展開」において今後の課題と可能性を,総括的に論じた。 またライト生誕150年にあたる今年,日本における記念式典として9月に「自由学園講堂(東京都豊島区)」,10月に「大阪工業大学・常翔ホール(大阪市)」においてライト作品の生成に関する講演を行うと同時にシンポジウムに参加し,11月にはフランク・ロイド・ライト建物保存協会総会「グッゲンハイム美術館(アメリカ)」に出席し,海外のライト研究者との意見交換を行った。
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