研究課題/領域番号 |
26420661
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
柴山 環樹 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10241564)
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研究分担者 |
岸本 弘立 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30397533)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | その場観察 / ナノ粒子 / 局在表面プラズモン共鳴 / 超高圧電子顕微鏡 / 量子ビーム / 複合量子ビーム / 同時照射 / 微細構造解析 |
研究実績の概要 |
最近、局在型表面プラズモンを利用した環境中の微量有害物質や生体内の微量代謝物質を捉えるバイオセンサーの研究・開発が進められている。従来、誘電体基板表面に有機物を利用して貴金属ナノ粒子を担持するため結合強度やそれらが光学特性に影響を与えるなど課題があったが、これまでの研究でイオンやレーザー等の量子ビーム照射により基板表面にナノ粒子を1層だけ分散させる表面改質法を見出した。しかしながら、量子ビーム照射により誘起される基板表面の貴金属薄膜のDewetting 現象の詳細は未解明で特に貴金属が矩形から球形へ変化するレイリー不安定時の挙動が不明である。そこで、本研究では、北海道大学が有するマルチビーム超高圧電子顕微鏡を利用し量子ビーム照射誘起Dewetting 現象のその場観察を行いその機構解明を目的とした。 平成26年度は、金薄膜を蒸着したSiO2ガラス基板に複合量子ビーム超高圧電子顕微鏡を用いてナノ秒パルスレーザー照射下のDewetting現象のその場観察を行った。得られた成果の概略は以下の通りである。 1.精密イオンシニング装置を(PIPS)を用いて金薄膜を真空蒸着したSiO2ガラス基板の背面からのみArイオンを照射するバックシニング法により、複合量子ビーム超高圧電子顕微鏡によるその場観察実験に最適なTEM薄膜試料を作製できる条件を見出した。 2.532nmのナノ秒パルスレーザーを照射すると、照射前は明瞭だった金薄膜の回折コントラストが不明瞭になり、ベンドコンターのような不定形な濃淡を呈した後、金薄膜の粒界と思われる領域が裂けて下地のSiO2基板が露出し、ホールが形成する様子を初めて捉えることに成功した。その後、ホールは成長し、ホール間の金薄膜が裂断し、網の目状の組織を経て粒子状になる一連のDewetting現象の過程を始めてその場観察することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年の4月に本研究で使用する北海道大学に設置してあるマルチビーム超高圧電子顕微鏡の高圧電源部が不安定になり、その後高圧タンク内の電子部品の故障が原因であることが判明したことから、修理に数ヶ月要し当初の実験が遅れた。その間、Ex-situ実験を進めて最適な条件を探索したことから、後半のマシンタイムを有効に活用することが出来、当初の計画通りの成果を得ることが出来た。 また、平成24年の概算要求で整備された複合量子ビーム照射装置が順調に稼動し、連続発振レーザーやナノ秒パルスレーザーをマルチビーム超高圧電子顕微鏡の試料位置に最大強度になる様に調整しながら照射することが可能になったことも、順調に研究が進展している理由の一つである。 以上の成果を総合的に判断して、おおむね順調に進展していると自己点検評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、ナノ秒パルスレーザー照射のみの実験を行った。平成27年度は、ナノ秒パルスレーザーとイオンを組み合わせた複合量子ビーム照射実験を計画している。また、基板の結晶性や原子配列がDewettingにより形成したナノ粒子の配列に及ぼす影響を検討するために、非晶質のガラス基板や単結晶基板を用いて実験することを計画している。 本研究により、複合量子ビーム超高圧電子顕微鏡では、Dewetting1現象のその場観察を行うことが可能であることを示したが、原子レベルのその場観察やDewettingにより微細構造や組織が変化してゆく過程の光学特性をその場測定・評価することが出来ない。 そこで、平成27年度では、原子レベルの高分解能でのその場観察や、光学特性をその場測定できる機構の検討を行い平行して開発を進めて行くことを計画している。研究を推進するために学術研究員を週に1日(金曜日)に雇用し、複合量子ビーム超高圧電子顕微鏡を使用したその場観察実験を推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に複合量子ビーム超高圧電子顕微鏡の画像データを保存するUSBメモリの購入とデータ解析用のPCを購入したため、その支払いが次年度の4月となるため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、全て平成26年度末に執行した分の翌月支払い分であるため、当初の平成27年度の計画に変更はありません。
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