量子ドットや量子細線、量子井戸などの低次元量子構造は、バルクとは完全に異なる物性を所有することから古くから注目されている。本研究では、酸化物結晶内部に配列させた転位部に機能元素を閉じこめる方法によって、固体内量子細線の作製や量子機能発現化を目的とした。意図的に転位を導入させ、転位に沿って機能元素を熱拡散することで、量子機能を持った1次元的な量子細線を形成させることが目標であった。 転位導入の段階では、バイクリスタル法を活用して、転位の制御を試みた。接合角を調整することによって、粒界転位配列や粒界構造ユニットの制御をすることができた。また、実験と数学との組み合わせによって、構造ユニットの配列はFarey数列で記述できることが明らかになった。接合角度がわかれば、構造ユニットの配列や粒界転位配列の仕方を予測できることが示された。同時にマイナーな構造ユニットの存在は暗に粒界転位の存在に対応することが検証された。 量子細線の形成では、転位に沿って機能元素を熱拡散することで、1次元的な量子細線を自己形成させることに成功した。特に、一部の対応格子方位関係の粒界の構造ユニット内に不純物が安定に存在していた。一次元的に配列するだけでなく、特異な電子状態を持つ量子細線を高密度で自己形成できていることが明らかになった。 結晶界面工学・収差補正走査透過型電子顕微鏡観察・第一原理計算・数学理論を組み合わせた本研究によって、自己組織的なプロセスを駆使した量子細線の合成・量子機能創成だけでなく、大容量化・デバイス化への明確な指針を得ることができた。
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