研究実績の概要 |
我々は、2005年より開発を進めてきたFLAPW-Fourier理論を2015年にほぼ完成することが出来た.前年度の研究実績で報告したように、その成果は、研究代表者水谷宇一郎と連携研究者佐藤洋一の共著による単行本「ヒューム・ロザリー電子濃度則の物理学」(内田老鶴圃: 2015)で詳述した.最大の成果は、イオン結合性、共有結合性そして金属結合性の相対割合が千差万別の化合物群に共通に、遍歴電子の干渉効果を抽出することで、結合形態を越えてヒューム・ロザリー電子濃度則の有効性を確立出来たことである.そして、周期律表の54個の元素について、1原子あたりの平均の遍歴電子数e/aの決定し、材料設計パラメータとして貴重なデータを提供した.最終年度の今年度は、「ヒューム・ロザリー電子濃度則の物理学」(内田老鶴圃: 2015)の成果を海外に発信するため、2015年以降に得た新しい成果を加えて、英語版"The Physics of the Hume-Rothery Electron Concentration Rule"をスイスの出版社MDPIから出版した. さらに、FLAPW-Fourier理論の普及を図るため、新規電子材料の開発にこの理論が有効な武器となることを明らかにした.遍歴電子の干渉効果はフェルミ準位に擬ギャップあるいは真のギャップを生成させる.この特異な電子構造を最大限活かす電子機能材料に熱電変換材料がある.我々は、無限にある化合物群の中でPearson記号がcF8, cF12, cF16と記される立方晶化合物群に注目した.遷移金属元素を含むか含まないかに関係なく、フェルミ準位にある電子は逆格子ベクトルの2乗|G|^2が8、11、12の格子面群と干渉効果を起こし擬ギャップあるいは真のギャップを生成することを明らかにし、これを活用して新しい熱電材料が開発出来る手法を提案した.
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