研究課題
本研究では超伝導複合線材の臨界電流の歪依存性は2つの要因から負荷歪に対して非対称となることを解明することに取り組んできた。最近の理論的取扱いによれば臨界電流は超伝導成分に生起する歪がゼロを中心に圧縮歪と引張歪に対して非対称に変化することが予測されている。提唱される理論がすべての超伝導材料で可逆歪領域における臨界電流の歪依存性を統一して説明できるかどうか考察してきた。さらに圧縮破断歪、引張破断歪、可逆負荷歪範囲等の機械―超伝導特性を体系的に調べ、その制御・改良方法を考案し産業応用に資する基礎データの収集を行った。最終年度には次のような研究成果を得た。REBCOおよびBSCCO テープ線材は超伝導層/フィラメントを複数の金属機能層と組み合わせた典型的な複合材料である。これらの機能層は臨界電流の応力・歪特性に著しい影響を与える。応力を負荷した状態で測定した臨界電流Icと応力をゼロに戻した時の回復臨界電流Icrを測定し、臨界電流を初期値で規格化した値、Ic/Ic0, Icr/Ic0についてそれらの応力・歪依存性について解析を行った。引張負荷により試料が破断等により劣化しなければ、除荷時の値Icr/Ic0は1になるはずである。しかし観測されたIcr/Ic0は荷重の増加とともに最初は徐々に減少し、ある荷重以上では急激に減少する。この急激な現象は超伝導層/フィラメントの破断によるものと考えられる。さらに超電導の破断によるかを確認するため繰り返し荷重負荷試験を行った。実用的な観点から除荷時の値Icr/Ic0が99%に戻るときの引張応力・歪と定義した。一方従来行われてきたIc/Ic0が95%維持される時の引張応力・歪は妥当性が無いことを明らかにした。
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Supercond. Sci. Technol. 29(2016) 094003
巻: 29 ページ: 094003 - 094011
10.1088/0953-2048/29/9/094003