研究課題/領域番号 |
26420674
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
手塚 慶太郎 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00334079)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光触媒 / 酸化物 / 磁性 |
研究実績の概要 |
光触媒の研究は酸化チタンを中心とする不対電子を持たない金属酸化物の研究が主流であり,不対電子を持つ遷移金属酸化物を用いた研究は遅れている。私達は,これまでに不対電子を持ついくつかの鉄複合酸化物に可視光応答性を有する光触媒活性があることを明らかにしてきた。しかも,酸化チタン等の従来の光触媒が非磁性体であったのに対して,これらの化合物は不対電子を有するので磁性体である。このことから,磁性機能を付加した光触媒の特徴を持つ。しかし,これら磁性光触媒に関する研究は非常に少なく,これらの鉄複合酸化物の光触媒活性や反応機構については未解明な部分が多い。本研究では,これらを明らかにし,磁性と可視光応答性を併せ持った新しい光触媒の開発指針を得るとともに,新たな光触媒を開発することを目指す。 H27年度は初年度に引き続き数種類の系の鉄複合酸化物の固溶体の精密合成に成功した。Rietveld解析により,固溶体の金属-酸素間距離,結合角,各原子種の結晶学的サイトにおける占有率を詳細に明らかにし,固溶に伴う結晶構造の変化の傾向を把握することができた。UV-VIS拡散反射スペクトル測定を行い,固溶量に伴う光学バンドギャップの変化の傾向を明らかにすることができた。メタノール分解と酢酸分解反応に関して光触媒活性を調査し,磁化測定も行った。さらに,H27年度は特に合成法を工夫することである系では光触媒活性がこれまでの約2倍になることを見出した。また,光触媒活性の時間依存性について調べたところ,ある系で反応速度は一定でないこともわかった。初年度は装置の不調で行えていなかった価電子帯の上端の準位の見積もりにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度は予定通り複数の複合酸化物の固溶体の精密合成に成功した。光触媒活性の評価に関しては予定していた反応について測定を行った。バンドギャップについても予定通り拡散反射スペクトル測定によって決定を行った。初年度に予定していたUPS/XPS測定による価電子帯準位の観察は装置の修理が完了し,いくつかの系で測定することができた。これらの状況から総合的に上記の区分になると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には計画通りに行うが,装置の故障等で少し遅れているバンド構造に関する研究を特に進めていきたい。また,H27年度は合成法の工夫で光触媒活性が2倍上昇することと反応速度が変化するという新しく興味深い発見があった。これらについて明らかにするために,他のいくつかの系でも同様の研究を行う。そして,磁性と可視光応答性を併せ持つ新しい光触媒の開発指針を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
バンド構造に関係する部分が予定より後半に変更した。このため,予算使用に関しては計画と比較して少し遅れている。しかし,上述したように研究自体はおおむね順調に進展しており,研究遂行上は問題ないと考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
光触媒の合成に関係する原料等の物品,バンド構造の測定と計算に関係する物品,評価に関係する反応容器や照射光源関連物品の購入を予定している。これ以外には学会出張の旅費,機器のレンタル料,学術誌投稿等に使用予定である。
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