研究課題/領域番号 |
26420676
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
保科 拓也 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (80509399)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 強誘電体 / 誘電特性 / エアロゾルデポジション法 / 広帯域誘電特性 / 単結晶 / 酸窒化物 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は2種類の新規強誘電体関連物質KNbSi2O7およびSrTaO2Nの超広帯域誘電スペクトル(kHz~THzの範囲にわたる複素誘電率の周波数依存性)を測定し、第一原理計算との融合により、同物質系の強誘電性や誘電特性の起源を明らかにすることである。 本年度は、KNbSi2O7単結晶の作製と電気特性の評価を行なった。結晶化ガラスの再溶融および徐冷プロセスによって、KNbSi2O7単結晶の作製を試みた。溶融温度、溶融時間、徐冷速度の最適化の結果、大きさ12×12×1 mm3以上の板状のKNbSi2O7単結晶が作製できた。また、合成したKNbSi2O7単結晶の結晶方位を背面X線ラウエ法で特定後、各方位の電気特性を評価した。分極反転特性を評価した結果、c軸方向に対してヒステリシスループが観察され、c軸方向に強誘電性があることが実証された。また、誘電特性を評価した結果、KNbSi2O7の室温での比誘電率はa、c軸ともに20程度であった。誘電率の温度特性ではキュリー点は600℃以下の領域には観測されず、優れた高温安定性を有する材料であることがわかった。また、KNbSi2O7の誘電・強誘電特性を定量的に説明するために、第一原理計算やテラヘルツ領域での誘電分散スペクトルの測定を行なった。その結果、構造中に存在するNbO6八面体内でNb5+が<001>方向に振動するようなフォノンモードがKNbSi2O7のソフトモードであることがわかった。 一方、SrTaO2Nについては、セラミックス厚膜をエアロゾルデポジション法により作製し、誘電特性を評価した。SrTaO2Nは1 MHzで比誘電率340を示し、タンタル酸化物ペロブスカイトKTaO3の比誘電率240と比較すると高い値を示すことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度目的としていた①KNbSi2O7単結晶の作製と結晶構造解析、②KNbSi2O7単結晶の電気特性の評価、③KNbSi2O7単結晶の超広帯域誘電スペクトルの測定、④SrTaO2Nセラミックス厚膜の作製について、全て計画を達成している。また、次年度に予定していた第一原理計算などの成果も既に得ているため、計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
KNbSi2O7に関しては、第一原理計算および詳細な結晶構造の解析により、強誘電性の起源および誘電特性の理解を試みる。 SrTaO2Nに関しては、作製した厚膜の不純物が多いことと、結晶性が低いことが課題として挙げられる。合成時のアンモニア処理条件の最適化などにより、これらの課題の解決を試みる。また、誘電特性の温度依存性や周波数依存性を評価し,SrTaO2Nがリラクサー強誘電体に分類される物質であるか実験的な回答を与える.また、ペロブスカイト型酸化物の酸素の一部が窒素に置換したときにイオン分極がどのように変化するのか、実験と計算の両面から明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
電気炉部材、ガス、寒剤、試薬などの消耗品の使用料が予定と異なったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
合成する試料の数や種類、評価の回数や種類を変更することで消耗品費の使用額を変更する。
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