研究実績の概要 |
無機強誘電体関連物質の研究分野はこれまでペロブスカイト型酸化物に関するものがほとんどであったが、今後、強誘電体の使用用途拡大やデバイスの特性向上を望む上で、ペロブスカイト型酸化物以外の新たな材料を探索することが重要である。これからの材料探索に求められるのは、用途に合わせた材料設計や結晶構造からの物性予測であり、これを実現することは材料研究に共通して求められる1つの到達点である。本助成研究では、強誘電体の材料設計手法を示すためのケーススタディとして新規強誘電体関連物質KNbSi2O7、SrTaO2N、SrTiO3-3xN2xに着目し、この物質の誘電・強誘電特性について結晶化学的な説明を試みた。 本年度は、KNbSi2O7の結晶化学的考察を深めるためにNbサイトの一部をTaに置換したK(Nb,Ta)Si2O7単結晶の作製と誘電特性の評価を行なった。育成温度を精密制御することによって5×5 mm2以上の板状単結晶を得ることが可能となった。KNbSi2O7では構造中に存在する(Nb,Ta)O6八面体内でNb/Taが<001>方向に振動するようなフォノンモードがK(Nb,Ta)Si2O7の誘電特性と深く関わっていることが明らかになった。 また、SrTiO3単結晶をアンモニア気流中で熱処理することでSrTiO3-3xN2x単結晶を得た。SrTiO3の酸素サイトの一部を窒素に置換することにより、誘電率が向上することを見出した。また広帯域誘電率測定の結果から,窒素置換による誘電率の向上が本質的な効果であることを明らかにした。すなわち,窒素置換によりSrTiO3のソフトフォノンモードであるスレーターモードが低周波側にシフトし、イオン分極が向上することがわかった。
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