研究課題/領域番号 |
26420677
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
吉田 克己 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 助教 (20337710)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 電気化学プロセス / セラミックス基繊維強化複合材料 / 界面層 / 導電性ポリマー |
研究実績の概要 |
本研究では、非導電性または低導電性セラミック繊維に導電性ポリマーを被覆することにより導電性を付与し、電気泳動堆積(EPD)法を用いた電気化学的アプローチによる高性能セラミックス基繊維強化複合材料の新規界面層形成プロセスの開発を目的とする。平成26年度は、非導電性または低導電性セラミック繊維表面への導電性ポリマー被覆プロセス及びEPD法を用いた界面層形成プロセスに関して基礎的検討を行い、プロセス条件の目処付けを行った。また、セラミックス基繊維強化複合材料の特性、微構造評価及びキャラクタリゼーションに関して予備的検討を行った。 導電性ポリマー被覆プロセスについて重合条件を検討した結果、重合温度を0℃とし、モノマー、酸化剤及びドープ剤の濃度を0.003Mとすることで、非晶質SiC繊維上におよそ70nmの膜厚の導電性に優れたポリピロール被覆相の形成が可能であることを明らかにした。EPD法を用いた導電性ポリマー被覆非晶質SiC繊維表面へのカーボン界面層形成プロセスについては、超音波分散装置を用いて調製した平均粒径0.4μmのカーボン粒子の水系懸濁液を用いて、電流制御によるEPDを行うことで、低導電性SiC繊維表面にカーボン界面層を形成することが可能であることを明らかにした。また、窒化ホウ素界面層に関しては、EPD用懸濁液の調製について検討し、超音波分散及び遠心分離を組み合わせることにより、平均粒径0.1μmの微細な板状窒化ホウ素粒子の水系懸濁液の調製に成功した。1次元SiCf/SiC複合材料の作製プロセスに関しては、ホットプレス法よりも低温でのマトリックス形成が可能なポリマー溶液含浸-熱分解(PIP)法で行うこととし、PIP法により1次元SiCf/SiC複合材料の作製条件を検討した。また、特性評価及びキャラクタリゼーションについて、試料形状や試験条件等を検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、非導電性または低導電性セラミック繊維に導電性ポリマーを被覆することにより導電性を付与し、電気泳動堆積(EPD)法を用いた電気化学的アプローチによる高性能セラミックス基繊維強化複合材料の新規界面層形成プロセスの開発を目的としている。 非導電性または低導電性セラミック繊維表面への導電性ポリマー被覆プロセスに関しては、プロセス条件の目処付けを終えており、研究計画通りに進行している。EPD法を用いた界面層形成プロセスに関しては、カーボン界面層形成プロセスについては、プロセス条件の目処付けがほぼ終わっている。また、窒化ホウ素界面層形成プロセスについては、EPD用懸濁液の調製条件の目処付けを終えているが、EPD条件については現在検討中であり、平成27年度も引き続き行う。EPD法による非導電性Al2O3繊維へのリン酸ランタン界面層被覆に関しては、リン酸ランタン粒子の水系懸濁液の調製条件及びEPD条件を検討中である。1次元SiCf/SiC複合材料の作製プロセスに関しては、PIP法による1次元SiCf/SiC複合材料の作製条件については目処付けを終えている。1次元Al2O3/Al2O3複合材料の作製プロセスに関しては、シート積層-ホットプレス法による1次元Al2O3/Al2O3複合材料の作製を行う予定であり、シート作製条件、成形方法等、検討を進めている。また、特性評価及びキャラクタリゼーションについて、試料形状や試験条件等を検討しており、平成27年度に、得られた複合材料の熱的・機械的特性の評価、界面特性の評価、キャラクタリゼーションを行う。 以上のことから、現在のところ、本研究は研究計画通りにおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
導電性ポリマー被覆を施したSiC繊維及びAl2O3繊維に対し、EPD法を用いた界面層形成プロセスについて、EPD条件及びEPD用懸濁液の調製条件を検討し、EPD法による界面層形成プロセスの最適化を図る。また、これらのセラミックス繊維を強化材として、PIP法またはシート積層-ホットプレス法により1次元SiCf/SiC複合材料及び1次元Al2O3/Al2O3複合材料を作製し、得られた複合材料の微構造評価、熱的特性、機械的特性、界面特性の評価、キャラクタリゼーションを行い、得られた成果を導電性ポリマー被覆プロセス及びEPD法による界面層形成プロセスにフィードバックし、界面層形成プロセスの最適化及び確立を目指すとともに、高性能セラミックス基繊維強化複合材料の新規界面層形成プロセスを提案する。 得られた成果をもとに、セラミックス基繊維強化複合材料の特性発現に重要な界面層設計指針を導出・提案する。さらに、セラミックス基繊維強化複合材料の界面層形成プロセスの確立に加えて、新規なセラミックスプロセシングとして、「ミクロスケール基材へのナノ-ミクロスケール粒子集積プロセス」の確立に向けた基本概念の提案を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額(20,008円)が生じた理由は、計画変更(旅費)により、交付申請時に請求した額に対して平成28年度分請求額から200,000円を前倒し請求により増額したが、消耗品の購入額が予定より若干少なくなったためである。
|
次年度使用額の使用計画 |
これらの金額と次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画として、研究計画に合わせて消耗品の購入を増やすことを計画している。
|