研究課題/領域番号 |
26420678
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
熊田 伸弘 山梨大学, 総合研究部, 教授 (90161702)
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研究分担者 |
三浦 章 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10603201)
武井 貴弘 山梨大学, 総合研究部, 教授 (50324182)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 水熱反応 / ビスマス酸化物 / 超伝導体 / 結晶構造 |
研究実績の概要 |
水熱反応によって新しい超伝導ビスマス酸化物の探索を行い、以下の成果を得ることができた。 1,220℃での水熱反応ではTc=27Kの超伝導体であるダブルペロブスカイト型構造を持つ(Na0.25K0.45)(Ba1.00)3(Bi1.00)4O12を合成することができたが、反応温度を240℃にすることによってTc=31.4Kの超伝導体(K1.00)(Ba1.00)3(Bi0.89Na0.11)4O12が得られた。この化合物の結晶構造については放射光X線回折および中性子線回折を用いて精密化を行った結果、同じダブルペロブスカイト型構造を持つが、BサイトにNaが含まれていることがわかった。この結果についてはChem.Mater.誌に掲載された。 2,鉛を含むビスマス酸化物を出発物質に用いた場合にはTc=15Kの超伝導体である(Ba0.83K0.17)(Bi0.54Pb0.46)O3が合成された。この化合物は単純ペロブスカイト型構造を有していた。 3,酸化銅を水熱反応の出発物質に加えたところ新しい化合物であるLiCuBiO4を発見した。この化合物の結晶構造については放射光X線回折を用いて精密化を行った結果、銅の一次元鎖を持つ構造であることがわかった。この化合物は超伝導性を示さなかったが、低温で磁気転移を示すことがわかった。また、酸化ニッケルを出発物質に用いた場合にも同様の結晶構造を持つ化合物が合成されたので、その結晶構造の精密化および磁気特性について調査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水熱反応によってTc=31.4Kの新たな超伝導体である(K1.00)(Ba1.00)3(Bi0.89Na0.11)4O12を見出いし、その結晶構造およびその超伝導特性について詳細に調査した。また、超伝導性は示さなかったが、新しいビスマス酸化物であるLiCuBiO4を見出し、その結晶構造および磁気特性について明らかにすることができた。これまでに一連の研究により論文3報を発表し、さらに1報が投稿中であることから本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに水熱反応による新しい超伝導ビスマス酸化物の探索により、3種類の超伝導体および2種類の新化合物を見出した。これまでの水熱反応ではアルカリ金属としてLi、NaおよびKを用いていたが、さらにRbおよびCsを用いた系に発展させることにより新しいビスマス酸化物の探索を行う。さらに希土類金属や遷移金属を含む系での物質探査を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
放射光X線回折実験(SPring-8)での予算を検討していたが、SPring-8への実験申請が認められたので、残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の実験ではアルカリ金属としてRbおよびCsを用いる予定で、これらの金属を含む化合物は高価であるためその費用に充てる予定である。
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