研究実績の概要 |
酸素透過性を示すSm-Ca-Fe系及びLa-Ca-Fe系ペロブスカイト混合導電性酸化物に着目し、固相反応法及び有機錯体重合法にてこれらの固溶体群を作製した。得られた試料の室温における粉末X線回折によれば、SmxCa1-xFeO3-d(x=0.5-0.8)は直方晶(Pbnm)のペロブスカイト構造であることを確認した。LaxCa1-xFeO3-dにおけるx<0.4の試料群では、ブラウンミラライト構造あるいはグラニエ構造をとり、x>0.4の試料群では、直方晶(Pbnm)のペロブスカイト構造をとることが分かった。これらの得られた各試料について、全導電率、酸素透過速度の温度依存性及び酸素分圧依存性を評価した。SmxCa1-xFeO3-d(SCF)では、測定した試料のうち、x=0.5の試料が最も高い酸素透過速度を示した。LaxCa1-xFeO3-d(LCF)では、800-1000℃の温度範囲で、x=0.65の試料の全導電率、酸素透過速度が、測定試料中で最大値を示した。LCFの化学拡散係数を測定したところ、810℃において、La固溶量がx=0.6, 0.65, 0.7, 0.4, 0.5の順で高い値を示した。格子体積の観点から考えれば、以上の組成の中でx=0.7が最も大きな格子体積を有することから、より高い化学拡散係数を示すはずである。実験結果が以上の推測と異なるのは、各La固溶量で酸素欠損量が異なること、ホールキャリアかつヤーンテラーイオンであるFe4+の存在割合が異なることと関係があると考えている。LCF(x=0.6, 0.65)の試料は、現存の混合導電体の代表例であるL0.8Sr0.2Co0.2Fe0.8O3-dに比べ、高い酸素透過速度を示すことから、工業用酸素セパレータ、固体酸化物形燃料電池用空気極材料として応用が期待できる。
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