揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds;VOC)ガスは、塗料、接着剤、ガソリン、シンナーなどに含まれるトルエン、キシレン、などが代表的な物質で、光化学スモッグを引き起こす原因物質の1つとされている。大気汚染が問題とされている現在、高感度なVOCガスセンサが求められている。センサ感度向上のためには、表面制御が重要と考えられており、多孔性半導体セラミックス膜の合成法の開発が盛んである。 本研究では、内部階層構造を有する球状酸化亜鉛粉末のVOCガスセンサの応用について検討した。これまでは、エチレングリコールを用いる水熱合成法により、c(+)面を表面に向け規則的に凝集したピラミッド型粒子で構成された球状酸化亜鉛粒子を合成してきたが、今年度は、合成法の変更により、凝集のない分散した六角錐ピラミッド型ナノ粒子を作製した。この酸化亜鉛粒子は、TEM、CBEDを用いた解析により、(0001)面を底面にした六角錐ピラミッド型の分散した粒子であり、新規形状の酸化亜鉛粒子であることが分かった。 この粒子を用いて高感度のガスセンサを作ることに成功した。作動温度350℃で、エタノール50-ppmに対して、感度10000の値が得られ、酸化亜鉛のエタノールセンサ感度として最も高い値を示した。これまで、半導体ガスセンサには、センサ感度が高い酸化スズが主に用いられてきたが、本研究ではエタノールセンサで酸化スズと並ぶ数値を得ており、酸化亜鉛の可能性が広がってきた。
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