前年度までの研究結果を踏まえ、可視光照射下において光触媒活性の発現が期待される新規14族・13族多元系窒化物の合成を目標とする研究を実施した。 これまでに研究事例のないウルツァイト関連構造を有する窒化物間の多元化を検討した結果、組成式0.5(1-x)ZnGeN2-xGaNで表されるZnGeN2-GaN系固溶体の形成が可能となることを見出し、ガス還元窒化法により単相粉末試料を合成することに成功した。 X線回折データのRietveld解析結果から、Gaの固溶に伴いZnGeN2の斜方晶構造におけるZnおよびGeサイトの秩序配列が消失することにより、単純ウルツァイト構造への相転移が生じることが明らかとなった。また一連のZnGeN2-GaN固溶体試料の71Ga NMR測定を実施することにより、x>0.2の組成範囲において、Gaイオンが等価な単一の格子点に固溶していることが示唆され、構造精密化結果の妥当性が裏付けられた。 光学特性の測定結果からは、本物質系におけるバンドギャップが可視光域の約3.0-3.1 eVに位置することが示され、端組成であるZnGeN2の約3.4 eVに対し、Ga固溶に由来するものと推測される大幅な狭小化が達成された。 合成したZnGeN2-GaN系試料に関し、波長>400 nmの可視光照射、犠牲試薬存在下で水の酸化還元反応試験を行った結果、水素生成速度2.8-3.6 μmol/h、および酸素生成速度100.4-126.6 μmol/hの光触媒活性を有することが確認された。最終的な評価としてx=0.1組成についてRuO2助触媒担持、照射波長>400 nmの条件下で純水の光分解を試みた結果、反応時間25 hにおける水素生成量21.5 μmol、酸素生成量10.2 μmolの結果が得られ、本物質系により可視光照射下で純水の安定な量論分解の達成が可能となることが示された。
|