研究課題
シリコンの100倍の移動度や鉄鋼の200倍の強度を示すグラフェンは様々な応用が期待され、理論から実用に移る時期である。しかし、製膜温度が1000度を超える・触媒が必要である等、その作製方法が確立されていない。本研究では、敢えて酸化雰囲気中でのレーザー蒸着製膜法により炭素系製膜を行い、酸化分解によりアモルファスカーボンを除去して、高品質なグラフェン膜の作製を目指している。これまでに原子間力顕微鏡の観察により炭素系材料のレイヤー・バイ・レイヤー成長した平坦な膜成長を確認していたが、酸化雰囲気での製膜条件を大きく変えることで、球状成長なども確認できた。各種基板上での炭素系材料の成長を試みているが、分子動力学的考察により、特にシリコン基板上での炭素の成長は不安定になり六員環が基板垂直方向に「立つ」状態が安定性を示している。球状成長などもこれらの不安定な成長モードに由来するものと考えられる。また、簡易な方法として、鉛筆で塗りつぶした紙にレーザー照射することで多層グラフェン粒の成長が確認されている。
2: おおむね順調に進展している
レーザー蒸着法でのグラフェン作製では、層成長を確認しているが電気特性評価が進んでいない。これは表面が酸化されているため、評価前に充分な水素アニールが必要であると分かった。レーザー蒸着システムの老朽化のため、新システムへの移行を行っていた。また、鉛筆で塗りつぶした紙にレーザー照射することで多層グラフェン粒の成長が確認され、本結果については多数の招待講演を行っている。
レーザー蒸着装置の更新がほぼ終了している。更に作製条件の検討を行い、低温でも高品質な膜の成長を試みる。電気特性評価については評価前水素アニール等の条件を見直す。また、レーザーの紙への照射による多層グラフェン作製では、シリコン基板上炭素膜を用いた実験を行い定量的な評価を試みる予定である。
特許所得に関して、共同出願人である関連企業の決裁の遅れにより、現在、弁理士との調整を始めたところである。そのため、発表・論文投稿の遅れが生じている。
特許出願後は論文投稿・発表を行うため、投稿料などに使用予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 6件、 招待講演 6件)
Japanes Journal of Applied Physics
巻: 55 ページ: 01AE24-1-4
10.7567/JJAP.55.01AE24
Nanoscience and Nanotechnology Lettres
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Proceedings of the 2nd International Conference on Microwave and Photonics ISBN 978-1-4673-6897-1