研究課題
Liイオン二次電池においては、遷移金属酸化物の結晶内のナノ空間をLiイオンが脱挿入することでイオン伝導が発現する。したがって、Liイオンが拡散する方位を制御したモデル正極膜を作成することで、リチウムイオンの充放電挙動と構造相関性を解析することが可能となる。オリビン構造を有するLiCoPO4正極材料では、CoO6八面体とPO4四面体のネットワーク構造内をLiイオンが[010]方向に一次元に脱挿入するため、電極膜の設計においては、[010]が膜面に対して垂直あるいは、傾斜した構造となることが必要となる。本研究では、化学溶液法によりAu(111)/Al2O3(0001)上にLiCoPO4前駆体溶液を用いて成膜、焼成することで(210)優先配向したLiCoPO4膜の作製に成功した。LiCoPO4膜断面の原子構造像を走査透過型電子顕微鏡(STEM)の環状明視野(Annular Bright-Field :ABF)法により観察した結果、[010]方位にLiイオンが規則的に配列し、リチウムイオンの脱挿入方向は、膜面より約40度傾斜して配向していることが判明した。また、このような構造制御した配向膜を用いて充放電試験を行うことに成功した。膜試料において充放電による容量劣化が観測されたため、充放電サイクル試験後の膜試料について、高角度環状暗視野(High Angle Annular Dark Field: HAADF)-STEM法により解析を行い、充放電による構造変化を解析した。その結果、膜表面におけるアンチサイト欠陥形成および、PO4四面体構造歪みによる構造劣化が充放電容量の抑制につながったことを明らかにした。さらに、全固体化リチウムイオン二次電池に用いられるペロブスカイト系固体電解質の構造解析を進めた。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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