研究課題/領域番号 |
26420694
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研究機関 | 一般財団法人ファインセラミックスセンター |
研究代表者 |
フィッシャー クレイグ 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 研究員 (80524925)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イオン伝導体 / 二次電池 / 理論計算 / 第一原理計算 / 分子動力学法 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、Mgイオン伝導体の候補材料の理論特性評価を行った。まず、無機結晶構造データベース(ICSD)から電極材料に使用できる遷移金属が含まれている酸化物やリン酸塩やバナジン酸塩を中心に候補を抽出した。その中から、Mg2Mn(PO4)2を選び、第一原理計算を行った。結果として、Mg金属に対する電池セル電位が (1/4Mgを抜いた) 4.8Vから(すべてのMgを抜いた)5.4Vまでの高い電位をもつことがわかった。現在の電解質に対しては電位が高すぎるが、組成を調整すれば、より適切な電位が得られる可能性があると考えている。電極材料を検討すると同時に、全固体Mg二次電池用電解質をの計算も行った。まず、全固体Liイオン電解質としてよく研究されているガーネット型Li7La3Zr2O12(LLZO)の構造およびLiイオン伝導率を古典分子動力学(MD)シミュレーションにより評価した。実験によるLLZOの構造・特性をよく再現できることを確認し、次にすべてのLiをMgに入れ替え、MD法を用いてガーネット型Mg3.5La3Zr2O12(MgLZO)をシミュレートした。MgLZOは世の中にまだ合成されてない化合物だが、MD法計算により、Mgイオン伝導が現れることがわかった。今回調べたMgLZO のMgイオン伝導率はLLZOのLiイオン伝導率より低いが、ガーネット型Mgイオン伝導体の組成を最適化すれば、よりよい特性が出る可能性は十分にある。よって、候補電解質材料として次年度に研究を続ける予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mgイオン伝導体の候補物質を調査するため、構造データベースから抽出したリン酸化物の完全結晶を第一原理計算で解析し、Mg挿入電位を得た。 また、より大きなシステムサイズの古典分子動力学法を用いて、酸化物結晶内のMgイオン伝導率の計算を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、理論計算で得られた結果を実際のMgイオン伝導体の特性と比較するため、イオン伝導体専門の実験家との共同研究を目指す。また、実験で検討しにくい特性(例えば、Mgイオンの拡散経路)をシミュレートし、構造と特性の関係を検討し、マクロな材料特性につなげることで、最適なMgイオン伝導体の設計指針を定める。古典MD法では遷移金属元素の価数変動を精確に計算できないため、それらの影響を扱うことができる第一原理分子動力学(FPMD)計算も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度導入装置について、計画していた金額よりも購買努力により安価に調達ができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
残額と来年度使用額を加え、計算機シミュレーションによるMgイオン伝導体の研究に必要なワークステーションを購入する。
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