研究課題/領域番号 |
26420697
|
研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
中村 淳 長岡技術科学大学, 工学部, 客員准教授 (90725649)
|
研究分担者 |
斉藤 秀俊 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80250984)
小松 啓志 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70721231)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 熱履歴 / 金属酸化物 / 熱衝撃耐性 / 亀裂 |
研究実績の概要 |
当該年度は、極過酷ヒートショック環境に耐えられるセラミックス膜の熱履歴および熱衝撃耐性を詳細に検討した。まず、自作の回転機に取り付けた、SUS 基板上の酸化イットリウム(Y2O3)膜に対して、H2-O2フレーム炎を用いた(外炎:2700℃)燃焼炎サイクル試験を実施し、基板の熱履歴を調査した。この時、試料がフレームを1回通過することをスキャン数と定義した。100、300、500 scanのサイクル試験をおこなった。SUS基材の最高到達温度は、それぞれ100scanの時は、450.5℃、300scanの時は625.5℃そして500scanの時は728.5℃だった。次にSUS基材上の堆積物は、ハナワルト法による物質同定の結果、立方晶系のY2O3結晶を含有しており、副生成物の混入は確認されなかった。そして、Y2O3膜の断面解析により、膜厚が8.8-13.5μm、2次元気孔率5.1-7.2%の緻密な膜が得られたことがわかった。Y2O3膜中の微細構造中の亀裂を画像解析により評価したところ、熱衝撃試験前後で亀裂数、亀裂長さ、単位面積毎の亀裂数いずれも増加したものの、scan回数には比例しておらず、高い熱衝撃耐性を有することがわかった。今後、より過酷な熱衝撃試験を展開する為に、最高400 rpmまで対応可能な専用回転器を検討し、専門業者と設計を行い、導入した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、本研究では30,000℃/s の極過酷ヒートショックで破壊しない金属酸化物の作製方法と普遍的な結果、すなわち、どの原料酸化物+基材金属の組み合わせでも同様の結果が得られるのか明らかにすることである。本年度は、極過酷ヒートショックに耐えうるY2O3膜の熱履歴および熱衝撃耐性の解明を目指した。そこでは、当初の予定通り、SUS基材上のサンプル作製に成功し(過去において研究知見を有している)、燃焼炎サイクル試験の実施で高いヒートショックY2O3膜が得られる発見があった。より過酷な熱衝撃試験の実施を予定しており、またことなる原料酸化物や基材金属での実施も、検討予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の方針として、更なる極過酷ヒートショック金属酸化物の作製および検討を行う。前年度に設計・導入した専用の回転器を用いて、より過酷な熱衝撃試験の実施、Y2O3以外の原料酸化物(Er2O3等)への適用、SUS以外の基材金属上への適応などを検討する。また本年度は、次世代の熱遮蔽コーティング(TBC)用の新規キレート原料の創生への挑戦を行いつつ、実験を進める予定である。以上の実験計画により、前年度と同様に合成したサンプルの詳細な構造をX線回折法や電子顕微鏡、エネルギー分散型X線分析により解析を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
より過酷な熱衝撃試験を展開する為に、最高400 rpmまで対応可能な専用回転器を検討し、専門業者との協議を基に設計を行ったところ、当初想定していた物品費より低い価格で購入ができたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
発生した次年度使用額は、次世代の熱遮蔽コーティング(TBC)用の新規キレート原料の創生への挑戦に使用する。具体的には、キレート金属原料の作製に用いる、Y、Er、La等の希土類酸化物または希土類金属化合物の購入に使用する予定である。また、サンプルの熱履歴調査に用いる熱電対など装置の消耗品の購入に充てる予定である。
|