研究課題/領域番号 |
26420698
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
夏木 俊明 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (10432171)
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研究分担者 |
倪 慶清 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (00252544)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 金属ナノ粒子の調製 / 電気伝導 |
研究実績の概要 |
本研究では、主に次の二つの内容から研究に取り組んだ. (1)室温で焼成の可能な銀ナノ粒子の調製およびナノサイズの制御 銀ナノ粒子の調製では、クエン酸ナトリウムの水溶液で、硝酸銀の還元により、安価および合成しやすいという利点を持つ銀ナノ粒子の調製に成功した.また、グルコン酸ナトリウムとポリビニルピロリドン(PVP)を分散剤として使い、その使用量と水溶液の滴下時間及び反応温度をコントロールした状態で銀ナノ粒子サイズの制御を検討した.銀ナノ粒子は、エネルギー分散型X線分光分析(EDS)、UV-可視吸収分光法などで銀粒子を確認し、その構造解析を行った.また、粒度分布計、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、フーリエ変換赤外分光分析(FT-IR)などを用いて構造を同定した. (2)Ag/CNTナノ複合体の合成 カーボンナノチューブ(CNT)は優れた電気を持つため、銀ナノ粒子/カーボンナノチューブ複合体(銀ナノ粒子/CNT)を作製し、それを用いた透明導電材料を作製した.調製した銀ナノ粒子をカーボンナノチューブに化学方法で強く連結させ、以下のようなステップを含めて検討した.a) CNT表面に銀ナノ粒子を接合させるため、CNTを酸化処理することで、負に帯電したカルボキシル基(-COOH)を導入する.b) CNTの表面に縮合剤により、表面縮合反応を起こさせ、CNTの表面に銀ナノ粒子を接合させる.走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)で、構造を同定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低分子の還元剤を用いて、常温かつ短時間で調製できる銀ナノ粒子の作製に成功した.一般的な銀ナノ粒子の体積抵抗率は1.6×10-6Ω・cmである.グルコン酸ナトリウムを分散剤として、作製した銀ナノ粒子を用いて、作製した膜を250℃で焼成したところ、銀ナノ粒子の体積抵抗率は2.2×10-5Ω・cmとかなり低いものであった.グルコン酸ナトリウムはPVPより低温で焼成可能な分散剤であることが分かった. また銀ナノ粒子/CNTナノ複合体を合成することができた.CNT表面に銀ナノ粒子を付着させたことは透過型電子顕微鏡(TEM)で確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、銀ナノ粒子のCNTへの付着率を向上し、銀ナノ粒子をCNTに付着しやすくするようにCNTで酸処理を行い、 銀ナノ粒子/CNTナノ複合体の合成プロセスを検討する. また、ワンプロセスで、銀ナノ粒子とCNTのナノ複合体を作製することを試みる.この合成方法は、銀ナノ粒子を事前に調製しなくても、ワンステップでAg/CNTナノ複合体を合成することが可能であると考えられる.さらに銀ナノ粒子/CNT電気伝導薄膜の成膜プロセスについて物理方法及び化学方法で検討し、光透明性、電気抵抗性、熱伝導性、機械力学特性などを測定し、分析および評価を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
カーボンナノチューブが高価な材料であり、当初計画していた金額より安く購入できたため.
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次年度使用額の使用計画 |
試料を調製するため、前年度未使用額とH28年度請求額を合わせて、実験器具、冶具、試薬(樹脂、CNT、溶剤)、研究用機材消耗品などに使用する.また、論文の投稿、国内出張、国内と海外の発表に使用する
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