研究課題/領域番号 |
26420702
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
前田 将克 日本大学, 生産工学部, 准教授 (00263327)
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研究分担者 |
高橋 康夫 大阪大学, 接合科学研究所, 教授 (80144434)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | p型窒化ガリウム / コンタクト通電特性 / 有効正孔濃度 / 通電熱処理 / ショットキー障壁 |
研究実績の概要 |
p型窒化ガリウム(p-GaN)と金属配線材との界面でのコンタクト抵抗を低減するには,適切な電極材料を選択してショットキー障壁高を抑える,あるいは界面近傍のGaN中有効キャリア密度を上げてショットキー障壁幅を抑える2通りの方法がある.従来はGaN上に仕事関数の大きな金属材料を成膜後に熱処理する,前者に属する方法が多く採用されてきた.本研究でも電極材にNiおよびAuを採用して障壁高の低減を図ったが,それに加えて有効正孔濃度を高めて障壁幅を薄くする技術の開発に取り組んだ. p型GaNのアクセプター添加元素にはMgしか用いることができず,高濃度で添加しても有効正孔濃度がその約1%程度にしかならないことが知られている.GaNに添加したMgが有効なアクセプターとならない原因の1つに,MO-CVD法でGaNを形成する際に不可避的に混入するHが放出した電子がMgのアクセプター順位を占めることが挙げられる.このHを電極界面近傍から除去するため,熱処理中に電極間に直流電圧を印加して通電した.これは,電子を放出してイオン化したHは電圧印加により界面近傍から排出可能との予測に基づいている. 高純度N2雰囲気下で従来に比べて200 K程度低い673 Kで3600 s間,電極間に30 Vの電圧を印加しながら熱処理したところ,コンタクト抵抗を著しく低下させることに成功した.さらに低温である573 Kにおいても電圧を印加しない場合に比べて2倍以上の電気伝導度が得られ,熱処理中の電圧印加がコンタクト界面近傍の有効正孔濃度上昇に効果的であることが証明された.これは,GaNの製造プロセスにおいて,水素の混入を抑制する,あるいは混入した水素を排出するプロセスが,有効正孔濃度を高めて品質を安定化させることにおいて必須であり,熱処理中の電圧印加がその有効な手段となることを示している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来,困難とされていたp-GaNへの低抵抗コンタクト電極形成に向けて,その障壁となる課題としてp-GaN製造時のGaN中への水素混入による有効正孔濃度の低下に着目し,それに対する解決方法として通電熱処理法を提案し,その効果を実証した. 一方で,通電熱処理によって形成された界面組織解析の進展は十分とは言えず,通電熱処理によって得られた効果がどのような機構で発現するのか解明できていない. これは当初計画と比較して,界面プロセスに関する研究は計画以上の進展を見る半面,界面組織とプロセスメカニズムに関する検討がやや遅れている状態である.研究全体を見通したとき,最も困難な課題の解決法にH26年度中にめどをつけた意義は大きく,よって,順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
p-GaNへの電極形成プロセスにおける通電熱処理を,ナノスケール界面組織解析に基づいて実施する.すなわち,通電熱処理によるコンタクト抵抗低減効果が当グループが提唱する仮説どおりに混入水素の排出によるものか,それとも通電によってコンタクト抵抗低減を実現する相を生成するような従来にない界面反応が誘起されたのかを確認する必要がある.界面組織解析には透過電子顕微鏡法を中心とした材料組織解析法を用いる. また,上記の解析結果に基づいて通電熱処理の最適条件を模索し,実用技術としての完成度を高める.
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度は解決法が未知である困難な課題に取り組む必要があった.このため,グループ内で十分な討論時間が必要と判断し,旅費の不足が生じないよう配慮した予算配分を行った.しかし,研究代表者と分担者の日程が合わせられず,多くの議論をインターネット上の会議で進めざるを得なかった.その結果,プロセスの開発とその実証は当初計画以上の成果を上げた半面,界面組織解析が若干遅れ気味に進捗する状態となっている.H27年度は,この界面組織解析を重点的に進める計画としており,H26年度に生じた次年度使用額は当初計画通りの使途で使用する.
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次年度使用額の使用計画 |
H26年度に生じた次年度使用額はH27年度も旅費の一部として組み込み,各費目配分の変更はない.研究が大きな成果を目前にする段階にあるため,着実に推進していく.
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