研究課題/領域番号 |
26420703
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
阿部 浩也 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (50346136)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 磁気粘性効果 / コロイド / ナノ粒子 / レオロジー |
研究実績の概要 |
磁場下で流体の粘弾性が変化する現象をマグネトレオロジー(MR)効果と呼び、MR効果の大きな材料をMR流体という。従来のMR流体はミクロンサイズの鉄粒子の分散系(非コロイド系)であり、粒子沈降による不安定性や部材磨耗等が問題となっていた。そこで本研究では、ナノ粒子が分散したコロイド系MR流体の開発に取り組んでいる。これには、粒子間の磁気的相互作用に加えて、ナノサイズ域で顕著になる熱揺らぎ(ブラウン運動)の理解とそれらを考慮したコロイド設計が不可欠になる。 平成27年度は、平成26年度に合成したコア・シェル型Feナノ粒子を用いて、コロイド化を行うとともにその流体のMR効果を評価した。コロイド内では、等方的な熱エネルギー(kBT)と磁場下での磁気分極に基づく異方的な双極子相互作用エネルギーが粒子に作用する。粒子径をパラメータにして双極子相互作用エネルギーと熱エネルギーの比を変化させ、MR効果との関係を調べた。その結果、約100nm以上の場合に、粒子の異方性結合に基づく鎖状構造化が顕著になり、明確な降伏応力(印加磁束密度 0.1T)が発現することを明らかにした。従来のMR流体(非コロイド系)と比べて、本研究のMR流体は粒子沈降の抑制に優れていることも実証した。 このMR流体の特徴である、等温可逆的な液体から固体への変化を利用して、トルクデバイスを試作した。これは二枚の平行円盤の間にMR流体を挿入した構造をもち、外部磁場を印加しない場合、流体は粘性的となり、二枚の円盤間に力は伝達しない(接合は生じない)。一方、磁場印加下では、流体が固体化するために力学的な伝達が可能になる。このデバイスを評価した結果、「柔らかい」や「硬い」、その中間状態を含めて、力触感の情報伝達能が特に優れていることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノ粒子分散MR流体を合成し、その特性評価を進めたこと、さらにデバイスレベルでの評価を進めたため、おおむね順調に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ナノ粒子分散MR流体の特性向上を試みるとともに、今年度作製したデバイスの評価もさらに進める予定である。また、MR流体に適したナノ粒子の構造設計についても検討を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度未使用額については、前年度(平成26年度)に研究計画を一部変更したことが要因である
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は引き続き流体合成と機能性評価についての検討を進めていくので、そのために物品費を使用する。また、成果を学会等の場で公表していくために、旅費・その他を使用する。
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