研究課題/領域番号 |
26420705
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
矢吹 彰広 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70284164)
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研究分担者 |
荻 崇 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30508809)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自己修復 / コーティング / 金属 / 腐食 / 防食 / ナノファイバー / 静電紡糸 / 短繊維 |
研究実績の概要 |
金属材料の表面には,防錆処理としてコーティングが行われる。その中でも自己修復性防食コーティングは欠陥が生じてもその部分の腐食を防止できる機能を有し,環境規制されたクロメート処理の代替技術として熱望されている。これまでの研究において,コーティングへの機能性添加剤としてナノ材料,pH感受性修復剤が有効であることを明らかにした。本研究では自己修復性防食コーティング中の修復剤の放出パスとしてナノファイバーチャンネルを用い,ナノファイバー短繊維を添加した自己修復性耐候コーティングの開発を行った。本年度はセルロースナノファイバー短繊維について,表面への修復剤の担持方法の最適化を検討した。修復剤として吸着型修復剤,酸化皮膜型修復剤を用い,添加量の最適化を行った。さらに,ナノファイバーおよび修復剤の吸脱着挙動を把握するため,ゼータ電位の測定を行い,中性においてナノファイバーに修復剤が吸着し,アルカリ性になると修復剤が脱着することを明らかにした。それをエポキシ樹脂に混合して冷間圧延鋼板,アルミニウム合金表面に塗布し,基材に達する欠陥を付与した後に食塩水中で電気化学測定を行い,腐食抵抗をモニタリングした。試験の結果,修復剤を担持したナノファイバーを混合したコーティングでは腐食抵抗の上昇し,高い自己修復性を示した。さらに,コーティング中のpHを変更することにより,自己修復性の向上が確認された。また,静電紡糸装置の導入を行い,セルロースアセテートを用いた短繊維の合成を行い,ナノ粒子を混合することにより,短繊維の長さを制御できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノファイバーへの修復剤の担持については,修復剤の選定,過剰添加によるポリマーコーティングの性能低下などについて検討を行い,いかに多量の修復剤をナノファイバーのみに担持できるかに焦点をあてて,試験を行った結果,ナノファイバーと修復剤の最適な比率が存在することを明らかにした。次に重要なポイントはナノファイバーに担持させた修復剤をいかにコーティングの欠陥が生じた場所にのみ放出させるかであり,これまでの研究から修復剤の吸脱着制御については腐食反応であるカソード反応によって生じる水酸化物イオンの増加,すなわちpH上昇を利用することが有効であることが明らかになっている。コーティング内のpHを変更して自己修復試験を行った結果,最適なpHが存在することを明らかにした。また,静電紡糸装置を導入し,セルロースアセテートを用いてナノファイバー短繊維の合成ができることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として,導入した静電紡糸装置を用いてナノファイバー短繊維の多量合成を行い,それをポリマーに混合し,金属材料表面にコーティングを行う。合成においては各種のマルチノズルを用いる。ナノファイバー合成の有機材料としてはセルロースアセテートを用い,無機材料としてチタニアナノ粒子,シリカナノ粒子を用いる。試験ではpHを変更させた場合の修復剤の吸脱着挙動についてはセルロースナノファイバーの場合と同様に試験を実施する。セルロースナノファイバーの場合と同様に修復剤を担持させたナノファイバーをポリマーに混合し,それを金属材料に塗布し,試験片にスクラッチ試験機で基材に達する欠陥を付与して,腐食液中で電気化学測定を行い,自己修復性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度,導入した静電紡糸装置が当初予定よりも安価に購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
静電紡糸装置を用いたナノファイバー短繊維の多量合成のためのポリマーおよびマルチノズルの購入に用いる。
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