研究課題/領域番号 |
26420710
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
白鳥 世明 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (00222042)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 表面 / 界面 / 撥水 / 撥油 / 濡れ / 分離 / すべり / 転がり |
研究実績の概要 |
ガラス基板、高分子基板、金属基板など各種基板上に超撥油表面の作製を作製し、水滴および油滴の挙動を調べることにより固液界面濡れ現象の解明を試みた。第1に稼動スプレー法を考案し、基板に垂直方向に密度勾配のある撥水・撥油膜の新規形成方法を確立した。この研究成果は、英文学術誌Journal of Applied Physics に2014年に掲載された。また、材料の設備品費にて高速カメラを購入し、液滴の挙動を調査した。その結果、液滴の接触角、転落角といった従来の界面科学で用いられてきた物性値の他に、液滴の転落スピードや液滴のバウンドから薄膜の粘性、弾性をもることが可能になった。さらに、撥水膜、および撥油膜上を運動する液滴の挙動について、転がり、すべりの区別が明確になった。この撥水膜および撥油膜が固体である場合、液滴との固体ー液体界面の現象をハイスピードで捉えることに成功した。さらに、解析された現象を活用し、基板を従来の平坦基板からメッシュ状の基板に変更することにより、メッシュ状での油水分離が可能になった。メッシュの直径および孔のサイズを詳細に制御することにより、基板の可視光透過率を調整し、透明基材での油水分離がはじめて可能になった。この研究成果は、英文学術雑誌ACS Applied Materials Interfacesに2015年中に掲載されている。ハイスピードカメラを用いて現象の解析を詳細に行うことで、従来の観察では見出すことのできなかった界面現象の解明が可能になったと考えられる。今後、膨大な画像データの整理、解析を続け、界面濡れ現象を活用した新規展開につなげたい。上記国際学術論文2報の他、国際会議発表、国内学会発表も順調に済んでおり、研究計画はおおむね順調に進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基材表面の防汚コーティングに対する期待が建築、エレクトロニクス、自動車など多分野において高まっており、基材の種類や形状に制約が少ない、汎用性の高い超撥油表面作製技術が求められている。 本研究目的である、表面張力22mN/m程度の液滴をはじく(接触角150°以上)超撥油性表面をウェットプロセスにより作製し、耐久性の向上を目確認した。次に、撥油膜(固体)―液体界面の濡れに関して、(1)固体表面のCassie状態からWenzel状態への転移現象およびその物理的化学的要因 (2)撥油膜―基板の接着および剥離現象(3)油滴の温度、圧力と表面濡れ性変化 という3つの現象を解明する必要がある。 初年度で(1)が達成できており、また、その研究成果として、英文学術誌Journal of Applied Physics に2014年内に、さらに、ACS Applied Materials Interfacesに2015年中に掲載されている。ハイスピードカメラを用いて現象の解析を詳細に行うことで、従来の観察では見出すことのできなかった界面現象の解明が可能になったと考えられる。上記国際学術論文2報の他、国際会議発表、国内学会発表も順調に済んでおり、研究計画はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、撥油膜(固体)―液体界面の濡れに関して、(1)固体表面のCassie状態からWenzel状態への転移現象およびその物理的化学的要因 (2)撥油膜―基板の接着および剥離現象(3)油滴の温度、圧力と表面濡れ性変化 という3つの現象の解明であり、現時点で(1)が達成できているため、今後(2)及び(3)を推進する。さらに、 高速カメラによる膨大な画像データの整理、解析を続け、界面濡れ現象を活用した新規展開につなげたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数92円で購入できる研究用物品がなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
端数92円を次年度の消耗品費に追加して使用する。
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