研究実績の概要 |
形態制御および貴金属接合制御を施したNiOナノ粒子について、乾燥空気中に含まれた希薄水素の電気抵抗変化によるセンシング実験を行った。昨年度に立ち上げたトランスファーシステムにより、粒子の生成からセンサ応答測定まで、試料を大気中の湿気に曝さずに実行できたため、データ間比較において湿度の影響は無いものと考えられる。測定対象粒子は次の8種である。NiOナノロッド、NiO中空ナノ粒子、M-NiOナノロッド(M = Au, Pt, Pd)、M-NiOヨークシェルナノ粒子(M = Au, Pt, Pd)。金属成分中の貴金属組成はどれも5at.%程度である。これらの粒子膜各々について、0.02~1000 ppm水素含有乾燥空気(大気圧)に曝した際の電気抵抗変化を測定した(試料温度185℃)。その結果、NiOナノロッドが10~1000 ppmにおいて最も高い応答感度を示し、次はNiO中空粒子であった。これらに貴金属ナノ粒子を接合させた6種類はすべて応答感度が低下し、NiO粒子の形態および貴金属接合の様式(NiO粒子の外部か内部か)の違いによる影響は現れなかった。特に、M-NiOナノロッド(M = Au, Pt, Pd)では、NiOナノロッドの端部に貴金属ナノ粒子が接合されているため、貴金属粒子表面や接合周辺部での触媒作用による水素分子の解離促進による感度向上が期待されたが、そのような所見は特に見られなかった。今回の結果は貴金属接合が減感作用となることが明らかとなったが、その原因として電子的機構が考えられる。NiO単体では水素応答前後でホール濃度が粒子表面および全体で変化する一方、貴金属接合のNiOでは、フェルミレベルの貴金属へのピン留めにより、NiO全体の平均ホール濃度が変化できなくなり、p型伝導に支配的な表面層のホール濃度変化が乏しくなったことが、応答低下の原因であると考えられた。
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