研究課題/領域番号 |
26420717
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
篠田 健太郎 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進製造プロセス研究部門, 主任研究員 (10442732)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エキシマレーザー / 塗布光照射法 / 高速温度計測 / 放射温度計 |
研究実績の概要 |
機能性酸化物の大気圧下での低温製膜の実現に向けて期待されている塗布光照射法では、紫外パルスレーザー照射時の光結晶成長機構の解明が重要であり、高速温度測定による光-熱反応の定量化が求められてきた。初年度は、従来の高速温度測定に実績のある熱放射光を利用した温度計測法を精緻化することにより、放射測温における温度計測下限値を見積もるとともに、温度校正がその成否の鍵となることから、温度校正方法の確立に向けて取り組んだ。具体的には、現有の放射光測定システムが直流信号に対応していないため、時定数を再検討し、測定が可能なように測定システムを改良した。さらに、簡易に温度校正が可能なよう、管状炉とラックを組み合わせた可動式の校正炉を構築し、頻度高く温度校正が行える体制を整えた。この校正炉を市販の放射温度計と開発した放射光測定システムによって計測することによってその互換性をとった。その結果、計測下限として1100K程度まで測れていることが明らかになり、これは過去のITOの冷却曲線から推定した計測下限とよい一致を示していた。また、これまでは単色の放射温度計であったが、二色に分光することによって、二色温度計の原理により、温度計測を行い、これまでの測定条件においては、単色の温度計測の結果が妥当であることを確かめた。一方で、スズ酸化物を用いて計測した例において、単色放射温度計では説明のつかない現象が観察された。蛍光現象が影響していると考えられるが、より精査が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
塗布光照射法における光結晶成長過程の解明に向けて、ナノ秒という高速度域での温度測定を確立することが重要であったが、単色温度計測に加え、二色温度計測を新たに加え、これまでの計測の妥当性を確認できたこと、また、あらたに温度校正システムを見直し、菅状炉を用いた精密温度校正が可能になったことにより、絶対温度についても一定の測定精度が得られたことは大きな成果である。また、提案する燐光寿命を用いた温度計測に関しても、計測シグナル中に蛍光と考えられるシグナルを検出できたことから、順調に展開できていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、放射温度計による計測に加えて、燐光現象を利用した温度計測に取り組む。まずは、測定対象である蛍光材料に粉末、もしくは、粉末を固めたバルク体を用い、エキシマレーザーを照射した時の燐光を検出し、その燐光プロファイルの形状観察に注力し、高速測定に必要な知見を収集する。具体的には、Y2O3:Eu3+をターゲット材料として用い、蛍光最大強度、燐光寿命、最大強度到達時間の三つを導出し、温度換算を行う。これらのデータ解釈については、連携研究者の産総研の染矢聡博士と連携して行う。温度換算が可能となったのちは、実際の塗布光照射法下での温度計測を行い、光結晶成長過程の解明を目指す。また、本手法は、原理的には、他のプロセスにも適用が可能であるため、他のレーザープロセスへの適用として、あらたに芝浦工大の湯本敦史先生のグループとの連携や、高速プロセスである溶射プロセスへの適用として、溶射分野の国内外の研究者との連携も積極的に取り組んでいきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
温度計測において、放射測温を主体として研究を行ったため、本年度当初計画していた、蛍光測定に関するバンドパスフィルターなどの光学部品の購入を行わなかったことにより、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度では、蛍光測定を主体となって研究を推進していくため、使用目的としては当初の予定通り、蛍光測定用の光学部品等の購入に使用する予定である。
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