研究課題
当初は、希土類金属を含む合金の製造過程で生じる、鉄鋼スラグに含まれる希土類金属を抗菌材料化することを計画していたが、昨年の研究によりスラグ中には充分量の希土類金属が認められなかったことから今年度は計画を変更し、希土類の毒性のメカニズム研究を目的に真核多細胞生物のモデルとして線虫を用いて希土類金属ストレスに対する生物の応答メカニズムの解析を行った。線虫では、銅やカドミウムなどの重金属ストレスに対して主にJNK(c-Jun N terminal Kinase)経路と呼ばれるMAP(Mitogen Activated Kinase)キナーゼを介するシグナル伝達経路が働き、種々のストレス応答タンパク質の発現が活性化することが知られていた。本研究では、希土類に対するストレス応答が他の重金属に対する応答と同様であるかどうかを確かめるためにJNK経路およびp38 MAPキナーゼ経路を構成する遺伝子の変異体を用いて、希土類金属に対する感受性の変化を検討した。この結果、希土類金属イオンに対しては、JNK経路に加えて、重金属応答では比較的マイナーな役割しか持たないp38経路も重要な役割を持つことを示唆する結果が得られた。また、希土類の持つ抗菌活性、抗真菌活性のメカニズムの解析に着手し、希土類が遺伝情報の複製に対し何らかの影響を持つことを示唆する予備的な結果を得た。昨年までの結果をまとめ論文を一報発表した
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Biological Trace Element Research
巻: 174 ページ: 464-470
10.1007/s12011-016-0727-y