研究課題/領域番号 |
26420720
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
松本 宏一 金沢大学, 数物科学系, 教授 (10219496)
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研究分担者 |
沼澤 健則 独立行政法人物質・材料研究機構, 超伝導線材ユニット, 主席研究員 (30354319)
阿部 聡 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (60251914)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 磁気冷凍 / 磁気熱量効果 / 磁性 / 希土類 / 液体水素 |
研究実績の概要 |
磁気冷凍法により高効率な水素液化機の実現には、より高性能の磁性体が必要である。本研究では、多重相転移を示す磁性体等を高周波溶解やアークメルトによって合成し、X線回折で評価した。X線で見られた組成の不均一などを改善するために、真空熱処理などを行った。磁化、磁場中比熱、断熱消磁測定などにより磁気熱量効果を評価し、実用となる磁気冷凍用磁性材料の研究を進めた。平成26年度は以下の物質について合成および特性評価を行った。 1.(Er,Dy)Al2の磁気熱量効果:希土類の中でHo, Er, Dy等の異方性の強い元素を含んだ、ラーベース化合物は常磁性-強磁性転移以下の温度でスピン再配列を起こし、付加的なエントロピー変化を誘起する。26年度はErとDyの比率を変化させることで、磁気転移温度、結晶場効果を変化させ、磁気転移温度の低温側でエントロピー変化の大きな温度領域を拡大できることがわかった。 2. Er(Co,Ni)2 , Er(Co,Cu)2系の磁気熱量効果:一次相転移を示すErCo2において特性を保ちつつ転移温度を水素液化温度に下げるための方策として、Ni, Cuによる置換効果を研究した。Ni, Cuの量が多くなると狙った組成の物質を単相で合成することが難しことが分かった。 3.(ErDy)NiAl系、希土類、遷移金属の置換でエントロピー変化を制御した物質の合成と磁気熱量効果を測定した。その結果、強磁性・反強磁性逐次転移によりエントロピー変化のとれる温度領域はかなり大きく拡大できることがわかったが、反強磁性の効果も大きくなりエントロピー変化の絶対値があまり大きくならないことが分かった。 また、研究成果について、論文発表、国際会議での招待講演、国内学会での発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画にあげた物質群について、かなりの部分については試作と特性評価を行うことができたので、おおむね順調に進展している。 (Er,Dy)Al2の磁気熱量効果については、エントロピー線図をほぼ確立するところまでできているので、27年度以降は、熱サイクルの解析および、冷凍装置への適用へと進めることができると考えられる。 (ErDy)NiAl系磁性体については、希土類、遷移金属の置換でエントロピー変化を制御した物質の合成と磁気熱量効果を測定した。その結果、強磁性・反強磁性逐次転移によりエントロピー変化のとれる温度領域はかなり大きく拡大できることがわかったが、反強磁性の効果も大きくなりエントロピー変化の絶対値があまり大きくならないことがわかり、当初の狙いほどの効果が得られなかった。そのほかR5(SiGe)4 (R:希土類)の合成では、単相物質を得ることが難しいなどの問題もあった。 平成26年度の研究遂行の中で、一部の磁性体において磁気エントロピー変化が広い温度範囲で獲得できる兆候が見いだされ、今後の発展が期待できる結果が得られているので、総合的に考えて、研究計画は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画にあげた物質群について、かなりの部分については試作と特性評価を行うことができたので、さらにエントロピー線図の確立へと進める。同時に、サイクルシミュレーションによる熱サイクルの解析を行う。 一部の物質においては、アークメルトで品位の良い試料が作製できなかったため、メルトスパン法などの試料作成方法を検討する。また、熱処理による試料品位の改善についても引き続き取り組む。 ここまで明らかになった、特性について学会発表や論文とりまとめについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
磁性体の作製について、一部の材料の試作で製法の再検討が必要になった。このため、製法検討が進むまで、使用を見送った費用が発生した。また、共同研究先である物質・材料研究機構における実験の回数が当初予定より少なかったので、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
試料作成を速やかに進める。物質・材料研究機構における実験を速やかに実施する。
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