研究実績の概要 |
磁気冷凍法により高効率な水素液化機の実現のためには、より高性能な磁性体が必要である。本研究では、多重相転移を起こす磁性体等を高周波溶解、アークメルト、スパークプラズマ焼結などによって合成した。磁化、磁場中比熱、断熱消磁測定などにより、磁気熱量効果の評価を行い、実用となる磁気冷凍用磁性材料の研究を進めた。 1.(Er,Dy)Al2の磁気熱量効果の評価:重希土類の中でHo, Er, Dyなどの異方性の強い元素を含んだラーベース化合物は、常磁性強磁性転移以下の温度でスピン再配列を起こし、付加的なエントロピー変化を誘起する。また、これらの元素では結晶場によりエネルギーレベルが複雑に分裂するため、複雑な磁性を示す。ErとDyの組成比を変化させた金属間化合物を合成し、磁気転移温度の制御を試みた。エントロピー線図を確定させ、冷凍サイクルの解析と検討の基礎となるデータを確立した。 2.水素直接液化用の酸化物磁性体の検討:水素を磁性体表面で直接液化させることは熱効率の向上に有利であるが、この場合、磁性体が水素と反応しないことが重要になる。この観点から希土類元素を含んだパイロクロアやペロブスカイト構造の物質について合成と評価を行い、磁気転移や磁化特性などの基礎データを求めた。 3.水素直接液化用の硫化物磁性体の検討:水素液化段の磁性体として有望なEuSについて、高密度焼結体を合成した。従来の硫化物より高性能で、単結晶に近い性能を持つ磁性体の合成に成功した。 これらの研究成果について、論文発表、国内学会での発表を行った。研究計画に上げた物質群について、物質の試作と特性評価を行い、エントロピー線図を確立した。候補となる酸化物や硫化物の磁性体の合成評価を行った。熱伝導率の測定装置を構築し、磁場中での熱伝導率の評価を行うなど進展した。得られた結果について論文発表や国際会議発表を行った。
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