電磁波遮蔽特性は,材料の表面反射,材料内部の吸収(多重反射も)に分けられる.また、電磁波遮蔽特性は、材料構造、材料および構造の異方性、材料内部の損傷状態に関係する。そのため遮蔽メカニズムを解明することは何より重要であり、28年度は主に電磁波遮蔽メカニズムの解明に取り組んだ。 その成果として、CFRP構造材料において繊維配向によって電磁波遮蔽効果がかなり異なる。例えば一方向CFRPにおいて、繊維方向の電磁波は50dB以上にも達するが、カーボン繊維方向と直角方向では5dB程度であり、1/10ほど小さい。そのメカニズムは導電性の方向性及び誘電特性と強く関係していることを明らかにした。また、ナノコンポジットにおいて、強誘電体チタン酸バリウム(BTO)粒子と他のフィラーの最適ナノ複合化、ナノグラフェンファイバーの試作を行い、新規電磁波材料として有望であることを明確にした。各種材料のGHzレベルの誘電特性を初めて系統に計測し、MHz測定データとの一貫性が認められ、非常に広い周波数帯域での誘電特性を明らかにした。これらのデータは材料設計において非常に重要である。さらに電磁波の伝搬異方性を利用することで材料内部の損傷評価が可能であることを示した。材料内部に存在する損傷領域のサイズおよび形状を同定した。よって、新しい非破壊検査手法として提案することができた。これにより複雑構造体の電磁波遮蔽材としての実用化や、工業・医療および情報・高秘密性の他の分野への応用を展開する際に設計指針を与えることができた。
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