研究実績の概要 |
本研究では,リチウムイオン二次電池の正極活物質として高い性能を示すことが期待されるフッ化物系化合物について,高エネルギー密度化を目指している。その中で高容量を示すFeF3系化合物は,化学式中にLiイオンを含まないことから,既存の電池システムに直接使用できない。また,Liイオンを含むフッ化物系活物質であるMFx(M = Mn, Ni, Co;x = 2, 3)とLiFの複合フッ化物では,導電性の低さから,高いエネルギー密度を得られていない。そこで,導電性の改善を目指しLiF-NiO系化合物を合成したところ,放電電圧3.6V,200mAh/gを超える高い充放電特性が得られた。LiF-NiOにおいては,その充放電メカニズムの解明,および,さらなる高エネルギー密度化が求められることから,それらの課題解決に向けて,LiF-MMx'Oy(M,M'= Ni,Mn,Co,Fe)の合成・電池作製評価を行うとともに,含有元素と充放電特性の関連および充放電プロセスにおける化合物の変化について解析を進めている。 今年度は,LiF-NiO系化合物を合成し,組成や合成条件の変化と充放電特性との関連および,充放電前後の変化をXRD,XPSにより評価した。粉砕の長時間化により,LiFとNiOが固溶体となり,充放電容量が大きくなること,充放電前後では,Liが脱離挿入され,それに伴いNiの酸化数が変化することが示され,正極の作製法を最適化することで230mAh/gを超える放電容量を得た。また,活物質の導電性向上を目指しLiドープNiOを用いたところ,充放電レートの改善が見られた。 さらに,NiO以外の酸化物として,MOやMM2O4を原料として,LiFとの複合化を行い,電池を作製・評価したところ,LiF-MgMn2O4において,LiF-MM2O4系において最も高い250mAh/gの放電容量を得ており,さらなる高容量・高エネルギー密度化を目指して,新規化合物の開発を進めている。
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