研究実績の概要 |
本研究では,リチウムイオン二次電池の正極活物質として高い性能を示すことが期待されるフッ化物系化合物について,高エネルギー密度化を目指している。その中で高容量を示すFeF3系化合物は化学式中にLiイオンを含まないことから,既存の電池システムに直接使用できない。また,Liイオンを含むフッ化物であるMFx(M=Mn,Ni,Co;x=2,3)とLiFの複合フッ化物では,導電性の低さから,高いエネルギー密度を得られていない。そこで,導電性の改善を目指しLiF-NiO系化合物を合成したところ,放電電圧3.6V,200mAh/gを超える高い充放電特性が得られた。充放電メカニズムの解明や,さらなる高エネルギー密度化が求められることから,それらの課題解決に向け,LiF-MM'xOy(M,M'=Ni,Mn,Co,Fe,Mg)の合成・電池作製評価を行うとともに,含有元素と充放電特性の関連および充放電プロセスの解析を進めた。 27年度までに,LiF-MO,MM'2O4系化合物を合成し,組成や合成条件の変化と充放電特性との関連および充放電前後の変化を評価した。粉砕の長時間化により固溶体となり,充放電容量が大きくなること,充放電前後ではLiが脱離挿入され遷移金属の酸化数が変化することが明らかとなった。 28年度は,酸化物としてMM'Oなどを原料としてLiFとの複合化を行い,電池を作製評価した。合成試料では,固溶体形成や原料の違いによる格子体積の変化が確認できた。作製した電池の特性は遷移金属に依存しており,平均電圧3V程度,200~250mAh/gの放電容量を得た。また,LiF-NiMn2O4について充放電条件の改善により,318 mAh/gの放電容量を得た。原料や組成によって起電力・放電容量が変化することから,今後も,さらなる高容量・高エネルギー密度化を目指し,新規化合物の開発や構造解析を進めていく。
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