研究課題/領域番号 |
26420724
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
遠藤 宣隆 山口大学, 理工学研究科, 助教 (40314819)
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研究分担者 |
比嘉 充 山口大学, 理工学研究科, 教授 (30241251)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 燃料電池 / 高分子電解質膜 / ポリビニルアルコール / ブロックポリマー |
研究実績の概要 |
PVAは熱水に可溶なため、水系かつ温和な条件で官能基の導入や製膜ができる。その後、熱処理による物理的架橋と、グルタルアルデヒドによる化学的架橋により機械的強度を付与し、内部に不均一架橋構造によるイオン伝導経路を構成した電解質膜(PEM)が作製できる。そこで初年度は末端変性PVAを用いてPVAベースのブロック共重合体イオン交換ポリマーの合成と、合成条件および製膜条件によるPEM性能への影響を解析し、PVAベースのPEMの構造および作製法の最適化を検討した。 DMAFC用に末端変成PVAに四級アミンを持つモノマーを重合した、PVAベースのポリカチオンを合成した。比較用にプロトン型DMFC用のスルホン酸基を持つモノマーを重合したポリアニオンも合成した。官能基の導入についてはNMRおよびイオン交換容量の測定により導入を確認した。 種々の条件で作成したPVA系PEMはNafion117とほぼ同等のイオン交換容量を示し、イオン伝導度はNafionより低いが、メタノール透過係数はNafionの0.2~0.3倍と非常に優れたメタノールバリア性を示した。これはメタノール燃料の空気極側への透過を抑制し、出力の低下や燃料ロスの低減による変換効率および出力密度の向上が期待できる。 PVA系PEMは市販のアニオン交換膜であるNeoseptaAMXおよびDMFC条件におけるNafion115より高い最大出力密度を示した。これは高いメタノールバリア性により、メタノール透過による出力の低下を抑制し、他の膜と比べて高濃度のメタノール溶液において高い最大出力密度を示したと考えられる。PVA系PEMは膜自体の電導度は低いものの、発電特性試験においては高い出力密度を示しており、高いメタノールバリア性により、より高濃度のメタノール溶液を用いたDMAFCへの適用が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリビニルアルコールをベースとしたポリカチオンおよびDMAFC用PEMの製膜、および比較に用いるDMFC用のポリアニオンおよびPEM製膜とその基礎特性評価は順調に進めている。市販電極による発電特性評価も問題なく進めており、発電時における膜特性評価について検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
燃料電池セルは反応が起こる電極と電極間を隔ててイオンを輸送する電解質膜を、イオンを輸送する接着剤で密着させる構造を持ち、電極を形成するイオノマーおよび電極と電解質膜を接合するバインダーとその接着状態によるセル抵抗の大きさによりその発電性能は大きく影響を受ける。そこで初年度に開発したPVA系イオン交換ポリマーをベースに、イオノマー・バインダーに最適化したイオン伝導性接着剤の開発と、電極および膜電極接合体(MEA)の作製条件による構造やセル性能への影響を通して、膜電極およびMEAの構造最適化を検討する。 (1)前年度に開発したポリマーまたは市販されているポリカチオンの溶液をイオノマー溶液としてPtおよびPt+Ruを担持した炭素粉末と混合し、カーボンペーパーやカーボンクロス上にキャストし、燃料電池極を作製する。 (2) (1)で作製した燃料電池極および市販の電極と前年度に開発した膜を用い、イオノマーと同様の溶液をバインダー溶液として用いて接着、膜電極接合体(MEA)を作製する。 (3) (2)で得られたMEAをDMFCセルに組み込み、パッシブ型およびフロー型燃料電池評価装置を用いて、発電特性および電気化学特性を測定・解析する。また、Nafionや市販のアニオン交換膜による測定も行い、比較検討する。また、山口大学内に設置されている燃料電池評価装置を用いて、作成した電極の白金有効活面積の測定や、水素燃料における電気化学特性についても評価・検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、初年度末に試行予定であった電極作成に必要な白金担持触媒炭素粉末を、以前に購入・保管していたもので行い、購入しなかったため、差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
作成した電極の評価および水素発電評価を行うための燃料電池評価装置の移設に伴い、水素ガス発生装置を新規に購入する必要が生じたため、その購入に充てる。
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