本研究ではポリビニルアルコール(PVA)に陰イオン交換基としてQBm鎖を導入したブロック共重合体PVA-b-QBmを用いた高分子電解質膜を作製、得られた膜の基礎特性評価および単セルによる発電特性評価を行った。また、同様のポリマーをイオノマーおよびバインダー材料として使用した膜電極接合体における発電特性評価を行った。 PVA系PEMは10 wt%メタノール溶液において、最大69.0 mW/cm2の出力密度を示した。同濃度のメタノール溶液を燃料として使用し、Nafion膜を用いて作製したMEAによるDMFC測定における最大出力密度は3.2 wt%において26.2 mW/cm2、10 wt%で19.2 mW/cm2であった。PVA系PEMは高いメタノールバリア性により、メタノール透過による出力の低下を抑制し、他の膜と比べて高濃度のメタノール溶液において最大出力を示したと考えられる。 PVA系バインダーと白金担持炭素粉末を混合したのち、キャスト法により電極を作製した。作製したカソード電極およびアノード電極で膜を挟み、ヒートプレスにより転写することによりMEAを作製した。本法で作成した電極は市販のスプレー法と比較して緻密な電極になりやすく、燃料や酸化剤の供給が制限されるため、出力は低い結果となったが、Nafionバインダーによる電極と比較して優れたメタノールバリア性を示した。 PVA系PEMはポリマー自体の電導度は低いものの、優れたメタノールバリア性を示しており、より高濃度のメタノール溶液を燃料としたDMAFCにおいて有望であると考えられる。
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