研究課題/領域番号 |
26420728
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
佐藤 正志 東海大学, 工学部, 教授 (20459449)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シリサイド / 低温合成 / 固相合成 / 水素 / マグネシウム / 固相-気相反応 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、機能性無機材料として大きく期待をされているマグネシウム-14族元素系金属間化合物の中から、特にMg2SiならびにMg2Geの高融点合金、さらに化学的に類似したMg2Snの作製方法につして、従来の溶解法ではなく、水素を利用した新たな低温固相合成法の開発と検討を目的としている。該当年度では、前年度に行った「原材料粉末に水素雰囲気暴露・真空暴露を繰り返す」手法によって得られた結果を基に作図された圧力-組成等温線を利用し、混合粉体内におけるMgの水素吸収量ならびに放出量を厳密に制御しながら、水素の吸収または放出に伴う合金形成の過程を系統的に追跡した。Mgへの水素吸収量が異なる試料を作製し、粉末XRDによって相の同定を行った結果、反応の初期段階ではMgへの水素吸収が支配的であり、反応の中期から後期にかけては、i) MgH2→Mg+H2およびii) 2Mg+Si→Mg2Siなる2つの化学反応が同時に進行していることが明らかとなった。これは、他の14族元素とMgとの組み合わせにおいても同様であった。一方、異なる温度において、合金形成反応を追跡し、合金形成速度をアレニウスプロットとして整理した結果、水素の介在によって固相合成される当該反応では、従来の溶解法によって合成される反応と比較して、その合金形成に関わる活性化エネルギーが約40%程度にまで小さくなることが分かった。この大幅な活性化エネルギーの減少は、飛躍的な低温下で進行する結果と強い相関があるものと考えられる。これらの成果については、第76回応用物理学会秋季学術講演会、第25回日本MRS年次大会(招待講演)で報告を行ったほか、研究内容の紹介として真空ジャーナルに掲載されることが決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度においては、2通りのアプローチで研究を行う予定であった。即ち、(1)Mg粉末とSi,Ge,Snの14族元素群粉末に対し、前年度に得られた圧力-組成等温線を基にMgに対する水素吸収量を厳密に制御し、合金が形成される挙動を追跡すること。(2)異なる温度による合金形成挙動を整理し、化学反応速度論の見地から知見を得ること。(1)の内容については、混合粉末に水素をさらすことによって、反応初期段階では「Mgへの水素吸収」が支配的であるのに対し、反応中期から後期にかけては、「Mgからの水素放出およびMgと14族元素との合金形成反応」が支配的であるとの知見が得られ、当初の目的である反応過程を明らかにする結果が得られた。これは、前年度に定性的に得られた「Mgが水素を吸収する際よりも、水素を放出する際に金属間化合物の成長が顕著である」という結果を定量的の補完した内容となり、今年度の大きな成果となった。一方、(2)の内容については、合金化反応を時間軸を導入して、その反応過程を追跡した結果であり、合金形成時の活性化エネルギーが水素の介在によって著しく低下することを定量的に見出した結果である。これは、従来の溶解法と比較して、水素を介在させると飛躍的な低温下でも合金化反応が進行する事実と非常に相関性が高いものと考えられることから、次年度以降の詳細な化学反応速度論的研究の足掛かりとなる結果であり、今後の見通しも良好である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、合金化機構と反応速度に関わる研究を継続する。特に、水素が駆動力となって圧倒的な低温下で合金化が進行する事実と、合金形成時の活性化エネルギーとの間に強い相関が示唆されたことを踏まえ、時間分割による合金形成挙動を系統的に整理していく。具体的には、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法や電子線マイクロアナライザ等を活用して、ミクロな視点からの合金化過程を観察する予定である。また、既に得られた知見として、混合粉末の比表面積が合金化過程に影響する可能性が示唆されていることから、粉末粒度が合金化速度に与える影響について、定量的に整理する予定である。 以上、平成26年度~平成27年度の結果と併せて、水素を吸収する化学反応を駆動力とした金属間化合物の合成法に関して、熱力学的平衡および化学反応速度論的側面の両方から各データを整理することで、これら合金化機構を明らかとし、以上を総括して報告書を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該未使用額については、消耗品として計上した真空部品類の価格変動により、購入数に若干の変更を要したことで発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に予定している真空部品消耗品類の価格変動に注視しながら、今年度未使用額を含めて研究遂行に活用する予定である。
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