研究課題
研究代表者は,銅-インジウム系複合硫化物(以下,CIS)のコロイドを保護剤にメルカプト酢酸を用いて,水媒体中で室温にて合成した.それらを用いてCIS修飾二酸化チタン(CIS-TiO2)光電極,カーボン電極(対極),および多硫化物イオンをレドックスに用いて,量子ドット太陽電池を作製した.光電極の光物性,対極における多硫化物イオンの還元特性,さらに太陽電池のエネルギー変換特性の評価を行った.下記に示す幾つかの知見が得られた.1)CISコロイドのIn/Cuの組成比を変えたところ,InがCuに対してリッチであるCISコロイド(In/Cu = 2または3)が高い光応答性を示した.2)黒鉛電極の表面をメソポーラスなカーボンにより修飾することで,白金電極よりも高いエネルギー変換効率を示し,対極として高価な白金など貴金属を用いずに,安価な黒鉛電極で代替できることを明らかにした.3)CIS-TiO2光電極(In/Cu = 2)を各波長で光照射した場合,800 nm付近までの可視領域の光にまで応答し,500 nmの波長の光照射において,55%のIPCEを示した.さらに,連続的イオン層吸着反応による沈着(SILAR) 法を用いて,硫化インジウムや硫化亜鉛(ZnS)を被膜したZnS/In2S3/CIS/TiO2光電極では,70%程度と高い変換効率を示した.4)ZnS/In2S3/CIS-TiO2光電極// S2-/Sx2- //カーボン電極 のシステムを最適化することで,擬似太陽光 (AM1.5, 100 mWcm-2)の照射下で,エネルギー変換効率4.4%を達成した.
3: やや遅れている
本申請では,CIS/TiO2系光電極/ S2-/Sx2- /カーボン電極 のシステムを最適化し,擬似太陽光 (AM1.5, 100 mWcm-2)の照射下で,エネルギー変換効率7%の達成を目標としている.しかしながら,現時点では,そのエネルギー変換効率の実現が達していないため。
以下に示す実験を遂行し,量子ドット太陽電池のエネルギー変換効率7%以上を達成する.1)メルカプト酢酸以外のチオ酢酸,L-システインなど各種保護剤の種類や導入量を変化させて,CISコロイドの合成を行い,光物性を評価する.2)上記1)で合成したCISコロイドを用いて太陽電池を作製し,IPCEおよびエネルギー変換効率を評価する.3)太陽電池のインピーダンスを測定し,それらの結果を基にして,太陽電池の作製にフィードバックしていく.
大学から支給されている研究費を用いて、当初予定していた研究が遂行できたため。
物品の購入に充てる。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
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