未だ理論として不確実な固体イオニクスに基づく電極過電圧理論・過渡応答特性について異なる固体電解質と電極から構成される半セルの系統的な実験から,申請者らが提案している理論の実証研究を遂行した.本年度はイットリア安定化ジルコニアおよびオキシアパタイト型ランタン・シリケート固体電解質と銀電極から構成される半セルを用いて,電極過電圧による交流応答特性について検討した.イットリア安定化ジルコニアとオキシアパタイト型ランタン・シリケートは全く異なる電子構造を有するにも関わらず,電極過電圧による交流応答特性は類似したものであった.もし電極過電圧が固体電解質と電極材料の界面状態に影響されるげんしょうであるなら,電解質と電極材料の組み合わせにより,電極過電圧に関わる物理パラメータは異なる値を示さなければならない.しかし実験結果は固体電解質と電極材料の組み合わせによらないこと,また昨年までの結果も併せると過電圧パラメータは電極材料の影響が強く表れていることが明らかとなった.ただし電極材料そのものの電気的性質とは異なった特性であった.したがって電極過電圧は固体電解質/電極界面によるものでは無く,電極物質の表面またはバルク内部の酸素拡散を反映していることを明らかにした.また従来型の電気化学インピーダンス解析ソフトによる解析では,物理的な意味を持たない経験則パラメータを導入せざるを得ないため,新しいタイプの解析ソフトの開発も進め,開発途上ながら実解析に用いることが可能なソフトウェアの開発にも成功した.
|