研究課題/領域番号 |
26420737
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宅田 裕彦 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (20135528)
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研究分担者 |
浜 孝之 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (10386633)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ロール成形 / 高張力鋼板 / 電縫鋼管 / 加工硬化特性 / 環境材料 |
研究実績の概要 |
本年度得られた成果を以下に箇条書きで示す. ①電縫鋼管における変形特性を高精度に測定するため,非接触式の伸び計を新たに導入した.本伸び計により,材料が破断に至るまでのひずみを長手方向だけでなく幅方向にも高精度に測定することが可能になった. ②電縫鋼管の加工硬化特性を簡易に予測する数値解析手法を提案し,管周方向での加工硬化特性のばらつきを検討した.解析の具体的な手順は以下のとおりである. (a)まず,通常どおりロール成形過程の有限要素法解析を行う.(b)手順(a)で得られた各要素における変形履歴を,一要素だけから構成される簡易な有限要素モデルに境界条件として与えることで,一要素モデルによりロール成形工程を模擬した変形解析を実施する.(c)一要素モデルでロール成形工程を解析後,そのまま一軸引張変形解析を行うことで,模擬的に電縫鋼管の加工硬化特性を調査する. 以上の簡易的な計算により,種々の材料をロール成形した際の応答を容易に得ることができる. 次に得られた成果を示す.まず手順(b)における一要素モデルの解析結果と手順(a)における通常解析の結果で比較したところ,両者は良好な一致を示し,提案した手法の妥当性が示された.続いて,手順(c)により成形後の管における周方向での加工硬化のばらつきを調査した.板幅中央部とエッジ部を比較すると,エッジ部の方が降伏応力が大きかった.この降伏応力の差異は,ロール成形中にエッジ部は中央部に比べて多くの反転負荷を受けた結果,加工硬化が進展したためと考えられた.またこのことから,バウシンガー効果の影響はエッジ部と中央部で大きく異なることが示唆された.さらにこの仮説は,異なるバウシンガー効果特性を有する仮想材料を用いた解析により実証することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に挙げた,①実験環境の整備,②加工硬化特性評価のための簡易な解析手法の確立,③提案した手法を用いた管周方向での加工硬化のばらつき評価,という3項目を順調に遂行することができた.以上の結果を総合的に鑑みて,【おおむね順調に進展している】と判定した.
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今後の研究の推進方策 |
研究が順調に進展していることから,平成27年度も当初の予定通り,電縫鋼管の加工硬化特性を主として実験的に取得する方法の検討と実験の実施を行う.以下に具体的な研究計画を示す. (1)被加工材の両面にひずみゲージを貼付してロール成形装置を通過させることで,ロール成形中のひずみ履歴を調査する.その後,被加工材から小型試験片を切り出して単純引張試験を行い,加工硬化特性を明らかにする.この際,加工硬化特性の周方向でのばらつきを調査するため,板幅中央部とエッジ部から小型試験片を切り出して比較検討する.また併せて,得られた実験結果と一要素による簡易解析から得られた結果を比較することにより,解析手法を実験検証する.なお成形後の鋼管は曲率を持っているため,引張試験で用いる小型試験片の形状は曲率が影響しないように十分に事前検討した上で決定する. (2)平成26年度の解析結果から,板幅中央部とエッジ部では被加工材が受けるひずみ経路が異なることが明らかとなった.特に,エッジ部では反転負荷を伴う複雑なひずみ経路を経ることが示唆された.そこでエッジ部におけるひずみ経路が加工硬化特性に及ぼす影響を実験により直接的に調査する.具体的には,エッジ部で見られるひずみ経路を模擬したいくつかの多段階ひずみ経路パターンを被加工材に与えることで,その加工硬化挙動の違いを調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験で使用する消耗品(ひずみゲージや供試材とその加工など)を年度内に手配する予定であったが,納期が4月以降になることが判明した.そこで作業の優先順位を見直して,発注そのものを4月以降に行うこととした.そのため,平成26年度単体としては残額が生じることとなった.なお,優先順位の見直しによる研究進捗への影響はほとんどないことを付け加える.
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次年度使用額の使用計画 |
実験研究で使用する供試材,試験片加工,ひずみゲージなどの消耗品を予算に計上している.出張旅費としては,2回の国内会議,1回の国際会議に参加すると試算して必要経費を計上した.
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