研究課題/領域番号 |
26420738
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
竹中 弘祐 大阪大学, 接合科学研究所, 助教 (60432423)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大気圧非平衡プラズマ / ミストCVD / 酸化亜鉛 / 透明導電膜 |
研究実績の概要 |
本研究では、フレキシブルデバイスの高性能化・高機能化技術、また革新的なフレキシブルデバイス創製技術の実現に向けた、フレキシブルデバイス作製プロセスにブレークスルーをもたらす技術開発を念頭に、フレキシブルデバイスの実用化で必須である高品質酸化亜鉛薄膜の低温高速形成技術の開発を目標に、以下の研究を行った。 まず、大気圧非平衡プラズマ支援による酸化亜鉛薄膜形成技術の開発を念頭に、大気圧非平衡プラズマからの高密度・高活性な粒子入射束に対する、ミストとプラズマとの反応を調べる目的で大気圧非平衡プラズマを液体に照射させた際の放電特性を調べた。プラズマ・液体界面における発光測定では、プラズマと液体の表面との距離を変えることによって、生成するラジカル種を制御可能であることが明らかとなり、プラズマと液体との距離を近づけることにより液体(水)の分解反応より生成したOHラジカル強い発光が確認された。この結果は、酸化亜鉛形成に必須の酸化促進に有効な酸化剤(OHラジカル)の供給がミストから供給が可能であることを示唆している。また、ミストに溶解した物質と大気圧非平衡プラズマとの相互作用を調べるため、液体を介してプラズマを照射した際の液体中の有機分子の反応を調べた。プラズマ照射後の水中の有機分子の構造を赤外吸収ならびにX線光電子分光法を用いて調べたところ、分子の酸化反応に加えて分解反応が顕著に生じていることを明らかにした。この結果により、プラズマから気液界面を通して供給されたOHラジカルなどの酸化に寄与するラジカルが、液中への有機分子に影響を与えていることを明らかにした。これらの結果を基に、製膜前駆体を溶解した液滴に大気圧非平衡プラズマを照射して酸化亜鉛薄膜形成を行い、低温での酸化亜鉛薄膜形成を実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は大気圧非平衡プラズマの放電特性評価と、大気圧非平衡プラズマ支援による酸化亜鉛微粒子形成技術の開発の開発を目標に研究を進めてきた。大気圧非平衡プラズマとミストとの反応を調べる目的で大気圧非平衡プラズマを液体に照射させた際の放電特性を、プラズマ・液体界面における発光分光法を用いて調べ、生成するラジカル種を制御可能であることまた、液体(水)の分解反応より生成したOHラジカル強い発光が確認されている。しかしながら、大気圧非平衡プラズマ支援による酸化亜鉛微粒子形成技術の開発においては、その根幹を担う周波数可変ミスト発生装置の作成が遅延しており、そのため大気圧非平衡プラズマで反応を支援したミストCVDによる酸化亜鉛薄膜の微粒子形成技術の開発も、次年度にずれ込んでいる。まず現在所有のミスト発生器においてミストサイズやミスト密度、供給速度についてレーザー回折散乱法により調べ、材料供給方法の最適化を行っていくとともに、次年度前半で周波数可変ミスト発生装置作成を行い、微粒子形成技術の開発を行う。また、その遅延を回復する目的で、大気圧非平衡プラズマ支援による微粒子形成技術の開発の一環として、低圧プラズマを用いた基礎研究を進めており、酸化亜鉛のサイズ制御に関する知見を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた大気圧非平衡プラズマの特性の知見を生かし、周波数可変ミスト発生装置作成を行い、大気圧非平衡プラズマ支援による微粒子形成技術の開発を早急に行う。これと平行して、大気圧非平衡プラズマによる酸化亜鉛微粒子形成技術を基に、微粒子含有酸化亜鉛薄膜形成を実現するため、大気圧非平衡プラズマで反応を支援し生成した酸化亜鉛微粒子の大気圧下での輸送過程を調べる。具体的には、基板への酸化亜鉛微粒子の輸送過程について、大気圧下の頻繁な粒子衝突が生じている系であることを考慮し、ガス流速やプラズマ基板間距離を変化させて、レーザー回折散乱法により大気圧非平衡プラズマ中での酸化亜鉛微粒子を時空間的に観測し、その振る舞いを検討する。 上記の研究で得られた知見を基に、表面ナノ構造を制御した酸化亜鉛薄膜の形成を行う。表面構造に影響を与える可能性がある材料供給(ミストサイズ、材料濃度、供給速度)、および酸化亜鉛薄膜の高品質化に寄与しているプラズマ特性(活性種の種類および密度)を変化させ、高品質酸化亜鉛薄膜の形成とのその表面ナノ構造制御を行う。製膜初期、および結晶成長中の化学結合状態の解析から、プラズマ中での気相反応過程、および薄膜形成における表面反応過程を明らかにする。走査型電子顕微鏡(SEM)による表面・断面観察に加え、フーリエ変換赤外分光(FTIR)、X線光電子分光(XPS)、X線回折(XRD)による酸化亜鉛薄膜の組成・結晶性分析の結果を併せて検討し、透明性と電気伝導性を維持しつつ表面ナノ構造を持つ酸化亜鉛薄膜の形成機構を解明する。また、表面構造に影響を与える因子を明らかにする。大気圧非平衡プラズマ特性、気相反応過程、粒子輸送過程、表面反応過程との相関を検討し、大気圧非平衡プラズマによる表面ナノ構造を持つ酸化亜鉛の形成機構を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
周波数可変ミスト発生装置の作製の遅延により、予定していた測定を行う事ができなかったため、大気圧非平衡プラズマ支援による微粒子形成技術の開発に必要な実験・測定装置の購入を行わなかった。次年度の研究進捗に合わせて周波数可変ミスト発生装置の作製部材とともに測定装置の購入を行う予定のため、本年度の研究費を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
本申請における研究費は、研究計画・方法で述べた実験・測定に必要な部材の購入に要する費用に充てる。物品費は、プラズマ源を形成するための特注の真空部品や、気相測定や薄膜の物性測定を行う部材、酸化物透明半導体製膜のための使用する製膜用材料や薬品、および高純度ガスの購入に要する費用に充てる。 旅費等の細目に計上した経費は、本研究の成果を論文ならびに国内外の会議において発表するため要する投稿料、旅費に充てる。
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