研究課題/領域番号 |
26420740
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
佐々木 元 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30192595)
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研究分担者 |
杉尾 健次郎 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90294545)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 鉛フリーはんだ / 複合材料 / 微細組織 / 機械的性質 / 熱伝導 / 炭素繊維 / 濡れ性 |
研究実績の概要 |
高温用鉛フリーはんだの開発では、伸びやクリープ特性などの機械的性質が確保できていない。従来の経験的合金設計では、限界にきており、新たな発想での設計法が求められている。そこで、本研究では、1.近年、注目されている合金成分を基に、繊維、フィラーや炭素繊維、セラミックス粒子等を複合化させる。2.分散材の形状や分布状況などの組織が熱・電気伝導性に与える影響を理論的に明らかにするために、新たな伝導解析モデルを提唱、理論的予測を行う。3.その結果を下に、複合材料組織の最適化を行い、実用に耐えられる高機能な高温用鉛フリーはんだ材料の開発を行うことを目的とした。 本年度は、マトリックス材料として、Bi―Cu合金、Zn-20Sn合金を検討した。繊維については、炭素繊維およびVGCF(化学気相成長炭素繊維))の検討を行い、以下の調査を行った。 Zn-10Al-2Sn合金に炭素繊維を添加して複合材料を作製し、炭素繊維と母材の反応と母材組織の変化を明らかにし、各特性(強度、縦弾性係数、電気伝導率)への影響を調査した。Zn-10Al-2Sn/VGCF分散材料を作製するためにZn-10Al-2Sn合金とグラファイトとの濡れ性を調べ、はんだ用材料として適しているかを調べた。次にニッケルコーティングがZn-10Al-2Sn合金とグラファイトとの濡れ性に及す影響を調べた。Bi―Cu合金とグラファイトの濡れ性および界面組織の観察を行い、更にグラファイト表面へのニッケルコーティングが濡れ性、反応性に与える影響を明らかにした。固体密度、比熱、熱・電気伝導率、濡れ性、についての発現機構について微細組織よび引破面の組織観察から明らかにし、物性向上指針を得た。また、種々の複合材料組織に対応できる熱伝導シミュレーションを開発し、複合材料の熱伝導特性の予測を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、繊維として高融点金属を用いて実施するとしていたが、表面構造の異なる種々の炭素繊維について詳細に検討する必要があったことと、高融点金属を用いた場合、はんだ合金との反応性が種々の特性の劣化を生じさせることが分かった。この反応の抑制対策には、多くの更なる実験が必要と判断し、実験を割愛した。また、従来品に変われる複合材料の特性には多くの改善、検討すべき課題があることが分かったため、リードフレームやチップとの接合強度については、実験を省いた。一方で、基礎的物性の指針となる強化材とはんだ合金の濡れ性について詳細な観察を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の主な課題は、セラミックス系分散材の検討であり、これを計画通りに進めていく。また、複合材料の機械的、機能的性質の向上について重点的に研究を実施し、製造方法・条件を確立していく。そのため、リードフレームやチップとの接合強度、接合界面の信頼性の評価については、割愛していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった電気炉について、今年度は試料サイズが小さかったので研究室所有の電気炉を用いた。
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次年度使用額の使用計画 |
機械的性質の実験には、大きな寸法の複合材料の作製が必要である。それに対応できる大型の電気炉を購入予定である。また、多くの研究成果が出てきたので、今年度への繰越金の一部を学会発表等への旅費に充当する予定である。
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