研究課題/領域番号 |
26420744
|
研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
阿相 英孝 工学院大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (80338277)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ナノ材料 / 材料加工・処理 / 自己組織化 / 半導体 |
研究実績の概要 |
本研究期間内では,二次元平面のタイリングに基づく新規ナノ構造体の構造制御技術を提案・確立し,既存のリソグラフィー技術では作製困難な高次構造体を作製すると共に,得られた構造体を次世代ナノデバイスとして応用展開することを目的とする。その中でも特に,自発的に形成される化合物半導体ナノ構造の規則性・制御性,それらの制御原理を明らかにすることに重点をおく。 2014年度は,異方性エッチングを利用した半導体ナノ空間の制御に取り組み,Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体であるGaAsを加工対象として,アノードエッチングを用いて直径200 nm長さ100 μmのGaAsナノワイヤを作製した。アノードエッチングでナノポアをもつポーラスGaAsを作製後,アノードエッチングを長時間継続することで,三つの孔に囲まれた三重点位置に柱状のGaAsを残存させた。これは,GaAs基板内にメインパターン(孔の最密充填配置)を形成すると同時にサブパターン(GaAsナノワイヤの最密充填配置)を共存させた複合パターン形成の典型例といえる。2015年度は,結晶異方性エッチングに着目し,エッチャント組成,エッチング時間などの処理条件が,GaAs基板のエッチング形態に及ぼす影響に関して系統的に調査した。酸化剤の異なるエッチャントを用いて多段階で化学エッチングを行うことで,エッチャント組成とエッチング速度に関する基礎データを収集したと共に,深さ方向に異なる結晶面が露出した窪みパターンの作製条件を見出した。本研究を通じて得られた成果は国内外の学術会議で発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GaAs基板に対し,種々の酸化剤を含む酸性ベースのエッチャントあるいは塩基性ベースのエッチャントを用いて,外部電圧を印可しない単純な化学エッチングを施し,液濃度,温度,時間などのエッチングパラメータが基板のエッチング形態に及ぼす影響を系統的に調査した。エッチングパターンの長距離での規則性を制御するためには,既存のリソグラフィー技術との融合が必要になるが,GaAs基板の溶解挙動に関しては,現在の実験環境・実験条件においても十分に基礎データが集積できたと考えている。また,得られた基礎データを応用し,異なるエッチャントを用いた多段階エッチングを実施することで,基本周期を維持したまま深さ方向に複数の結晶面を持つエッチピットの作製条件を見出した。エッチピットを構成する結晶面,表面積,エッチング形態を任意に制御することができれば,光・電子デバイス等へ十分応用展開できると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
GaAsに加えGaAsPに関してもウエットエッチングに基づくナノ構造作製技術の基本原理,基礎技術の確立を目指す。適宜実験条件の改善・最適化を図りながら,当初の目的をほぼ達成した段階で,研究期間の後半は,二次元平面の加工だけでなく,基板深さ方向にも着目した三次元での加工を並行して検討し,補足的な二次加工を組み合わせることで半導体の高次幾何学構造の制御を目指す。GaAsに関しては,単純な化学エッチングの他に,金属を触媒とした化学エッチング(金属触媒エッチング)に関しても,自発的に形成される幾何学パターンの制御を進める。二次加工の手法としては,アノードエッチングだけでなく,通常のアノード酸化や結晶異方性化学エッチング,電圧印可金属触媒エッチングなどを組み合わせ,新規パターンの構造制御技術を確立したい
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験に必要な消耗品(試薬)を他の研究費で購入することができたため未使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究遂行のための設備備品のほとんどは備わっており,新規に導入を必要とする設備備品はない。そのため次年度分として請求した助成金と合わせた研究費は,系統的な研究を実施するための実験材料(化合物半導体基板,試薬など),研究成果を公開するための国内旅費および学術雑誌への論文投稿にかかる費用などで使用する予定である。
|