① 自動車用ワイヤハーネス材料の銅からアルミニウムの材料代替技術 現在自動車用ワイヤハーネスの材料は主として銅であるが、軽量のアルミニウムへの材料代替技術が環境負荷低減のため期待されている。交互伸線加工という新しい加工法を提案し、自動車用ワイヤハーネス用の高強度かつ高延性アルミニウム伸線材を得ることができた。この成果を基に一部であるが銅からアルミニウムの材料代替の試行が行われれている。伸線材の延性が改善する要因は、通常伸線材では線材の表層、中央部とも結晶方位がほとんど<111>となる繊維組織であるが、提案した交互伸線では結晶方位が<111>と<100>が存在することになる。この結晶方位が延性に影響していることを明らかにした。② 高強度・高延性の伸線材の製造技術 高炭素鋼線材において、加工硬化により3500MPa以上の高強度は得られるものの延性不足、耐疲労特性がよくないなどの欠点があった。交互伸線により総断面減少率を90%以上加工すると延性が改善できることを引張り試験、ねじり試験、曲げ試験から明らかにした。また高加工された高炭素鋼線においてデラミネーションという脆性破壊の発生が大きな問題となっているが、交互伸線によりこの欠陥発生の抑制ができることを示したのは大きな研究の成果である。③異形断面を持つ伸線材を利用した高強度・高たわみばねの開発 ばね素線の断面形状を丸から四角などの異形にすることにより機能を持つ高たわみばねの製作ができることを明らかにした。このばねを自動車用エンジンの弁ばねに適用するとエンジン自身の縮小化、軽量化が図られ環境負荷低減に役立つことも示した。特にばね巻きFEM解析を行い、ばね巻き後の形状予測を可能とした。以上の研究成果は産業界からも注目され、その成果を利用した製品開発も進んできている。
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